「お迎えは何時でも良いが今日は嫌」老いを笑い飛ばすシルバー川柳。

2013/09/11 11:36 Written by Narinari.com編集部

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公益社団法人 全国有料老人ホーム協会は9月11日、毎年敬老の日に向け公募している「シルバー川柳」の今年の入選作品を発表した。

今年で13回目を迎えた「シルバー川柳」は、13,872句が寄せられ、20作品が入選した。選考は当協会加盟ホーム入居者のうち約980人による候補作品への投票、および協会広報委員会が実施。今年は作品応募数が昨年の約1.5倍となる中、高齢者の応募割合がより一層増加している。アクティブシニアのますます意気軒昂(いきけんこう) といった気配が感じられ、“シルバー世代あるある”をシニカルに表現した作品が選ばれているのが特徴だ。

入選した20作品は次の通り。

「お医者様パソコン見ずにオレを診て」(男/秋田県/74歳/農業)
「寝て練った良い句だったが朝忘れ」(男/埼玉県/73歳/無職)
「『先寝るぞ』『安らかにね』と返す妻」(女/埼玉県/71歳/主婦)
「欲しかった自由と時間持て余す」(女/岩手県/77歳/無職)
「お迎えは何時でも良いが今日は嫌」(女/神奈川県/84歳/無職)
「お迎へと言うなよケアの送迎車」(男/福岡県/84歳/無職)
「金貯めて使う頃には寝たっきり」(男/福島県/69歳/無職)
「欲しい物今じゃ優しさだけになり」(女/大分県/74歳/主婦)
「骨が減り知人も減るが口減らず」(男/広島県/53歳/公務員)
「症状を言えば言う程薬増え」(女/奈良県/85歳/無職)
「孫が聞く膝が笑うとどんな声?」(女/埼玉県/59歳/無職)
「本性が出ると言うからボケられぬ」(男/神奈川県/53歳/会社員)
「メイドカフェ?冥土もカフェがあるんかえ?」(女/三重県/36歳/パート)
「ひ孫の名読めない書けない聞きとれない」(男/京都府/48歳/会社員)
「耳遠くオレオレ詐欺も困り果て」(男/兵庫県/60歳/公務員)
「子は巣立ち夫は旅立ち今青春」(男/栃木県/61 歳/無職)
「検査あと妻のやさしさ気にかかり」(男/岐阜県/63 歳/自営業)
「白内障術後びっくりシミとシワ」(男/大阪府/71歳/無職)
「期限切れ犬にやらずにオレに出す」(男/東京都/74歳/無職)
「暑いのでリモコン入れるとテレビつく」(女/宮城県/75歳/無職)

全体的には「加齢による容姿・肉体・知力の衰え」を嘆いたり、諦めを持って揶揄する句が、2割弱を占め、題材として最も多く扱われた。シミ・シワ・入歯・頭髪等は毎年多く取り上げられているが、以前は取り上げにくかった「加齢臭」「尿漏れ」関連の作品も多々見受けられ、「老い」を積極的に笑い飛ばす明るさが感じられる。加えて「もの忘れ」も題材としては大人気で、「何を忘れたのかさえ忘れた」様をも、笑いに変えている様子がうかがえる。

夫婦を題材とした句は相変わらず多数あったが、自身のパートナーへの不満や揶揄と思いきや、実は行間から深い情愛や感謝の気持ちが感じられる句が多い点が微笑ましい。「夫婦」ネタは、女性よりも男性のほうが多く詠んでおり、虐げられるにせよ、愛おしむにせよ、妻無しではシルバー世代を語れない男性の悲哀が浮き彫りとなっている。

また、世相を反映する言葉やネタを題材にしている句の中では、「今でしょ!」「じぇじぇじぇ」といった流行語を詠み込んだ句も多く見受けられた。加えて、富士山を中心とした「世界遺産」「アベノミクス」「TPP」「IPS」などの時事ネタも題材として数多く詠み込まれていたが、最も多かったのは「オレオレ詐欺」で、シルバー世代の関心の高さが、うかがえる。

そして想像以上に三浦雄一郎氏のエベレスト登頂を詠んだ句が多く、三浦氏はシルバー世代の間では「時の人」といった存在のようだ。

そのほか、携帯・スマートフォン・タブレットなどを扱った句も多く、これらのモバイルデバイスがシルバー層の日常にも深く入り込んでいる様子が分かった。

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