アカデミー賞の開催ピンチ、米脚本家組合ストが続けば出席者ゼロも。

2007/12/21 19:06 Written by コジマ

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いよいよ開催まで約2カ月に迫った米アカデミー賞。「オスカーレース」と呼ばれる前哨戦的映画賞の受賞作品も次々に発表され、アカデミー賞に向けてムードが一気に高まっているのだ。これまでのオスカーレースを振り返ってみると、トップを走るのはジョエル&イーサン・コーエン兄弟監督の「ノーカントリー」。米映画批評家会議賞(ナショナル・ボード・オブ・レビュー)、ニューヨーク映画批評家協会賞などで作品賞を受賞している。

それを追いかけているのが、ロサンゼルス映画批評家協会賞で作品賞を受賞した「There Will Be Blood」(ポール・トーマス・アンダーソン監督)で、ゴールデングローブ賞に最多7部門ノミネートされたキーラ・ナイトレイ主演の「つぐない」(クリストファー・ハンプトン監督)や、ニューヨークオンライン映画批評家協会賞の作品賞を受賞した「潜水服は蝶の夢を見る」(ジュリアン・シュナーベル監督)、デンゼル・ワシントン&ラッセル・クロウ主演の「アメリカン・ギャングスター」(リドリー・スコット監督)なども強力なライバルとなっているのだ。

来年1月には、近年最もアカデミー賞に直結していることで注目されているブロードキャスト映画批評家協会賞や、アカデミー賞に次ぐ権威を誇るゴールデングローブ賞の授賞式が開かれる予定だけど、ここに来て、アカデミー賞の開催に黄色信号が灯ってしまったのだ。

原因となっているのは、11月5日に始まった米脚本家組合の無期限ストライキ。印税の配分などをめぐって映画業界団体との交渉が決裂したために突入し、1カ月以上経った現在も終息の兆しは見えていない。この背景には、脚本家組合が家庭用ビデオがまだ普及していなかった頃、ビデオの売り上げからの取り分を主張しないで映画会社と契約したという苦い経験があり、これから本格的になるインターネット配信に向けて取り分の増加を主張しているのだ。スト突入によって映画やドラマの撮影がストップし、映画産業で成り立っているハリウッドは失業者が続出している。

業界団体側が譲歩しないことに業を煮やした脚本家組合は、映画やドラマの脚本執筆だけでなく、アカデミー賞とゴールデングローブ賞の授賞式についてもボイコットを表明。各賞の授賞式は構成作家の台本によって進行するため、両賞の制作会社はストを特別に解除するよう求めていたのだけど、脚本家組合は要請を却下し、あまつさえゴールデングローブ賞授賞式の会場にスト破りを見張るピケラインを張ることも予定しているのだ。

構成作家の手が加わらない授賞式はこれまでどおりのクオリティが維持できるわけがなく、これだけでも開催が危ぶまれていた。さらに、ゴールデングローブ賞にノミネートされたほとんどの俳優(同時にアカデミー賞ノミネート有力俳優でもある)が脚本家組合のストを支持している米映画俳優組合に所属しているため、出席を見合わせる人が続出する恐れが出てきている。つまり、ストが終了しなければ、アカデミー賞とゴールデングローブ賞の授賞式は出席者がゼロの中、構成作家が手がけないボロボロの進行で行われることになるのだ。ちなみに、映画俳優組合が主催する全米映画俳優組合賞授賞式(来年1月27日開催)へは、例外的に台本執筆を許可しているのだとか。

今年度のアカデミー賞は、外国語映画賞へのエントリー資格をめぐって論争が繰り広げられるなど問題が噴出しているのだけど、授賞式開催に向けて最大の危機を迎えた現在、ストに対する業界団体側の動きが注目されるのだ。開催中止だけは避けてもらいたいなあ。

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