カナダの「ネットわらしべ長者」、ついに一軒家を手に入れる。

2006/07/11 23:55 Written by コジマ

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以前、お伝えしたカナダの「ネットわらしべ長者」、カイル・マクドナルドさん。赤いペーパークリップをスタートに、インターネットを通じて物々交換を続けていたこの26歳の青年が、ついに目標である一軒家を手に入れたのだ。場所はサスカチュワン州のキプリングという町で、この“偉業”を称え町を挙げて歓迎されている。

前回までの経緯をおさらいしてみると、カナダのモントリオールに住むマクドナルドさんは、彼女や2人のルームメイトと暮らしながら、アルバイトをしてお金を貯めてはバックパック旅行に出るといった気ままな暮らしをしていたのだ。しかし、いつしか落ち着いた生活に憧れるようになり、その象徴である持ち家を手に入れたくなった。でも、お金がない。そこで思いついたのが、Craigslist.orgという地域情報を載せるサイトの物々交換のコーナーを使って、赤いクリップ1つからどんどん高価なものに換えていくという「わらしべ長者」のようなアイディアだったのだ。うーん、この辺の発想が現代的なのだ。

赤クリップから魚の形をしたペン、陶器のドアノブ、コールマン製のキャンプストーブ、発電機、ビール樽とネオン看板などがセットになったパーティー・パック、スノーモービル、ロッキー山脈にあるヤークへの旅行権、バン、スタジオでレコーディングできる権利と交換していき、途中、発電機から発火するというトラブルを経ながら、ついに米アリゾナ州フェニックスの一軒家に1年間住む権利という目標まであと一歩のところまで来ていたのだ。

マクドナルドさんのすごいところは、交換の際は現地に赴くということ。旅費がかさみそうだけど、旅行ついでやアルバイトの実演販売の出張を有効に活用して、モントリオールの反対側にあるバンクーバーやシアトル、ニューヨーク、はるか遠くのフェニックスまで訪れている。

さて、その後は、フェニックスの家に1年間住む権利を、同じフェニックスでミュージシャンのアリス・クーパーが経営するレストランで働く女性との交換が成立した。その女性は、マクドナルドさんが行っていることをアリス・クーパーに話し、居住権と引き換えにアリス・クーパーと半日一緒にいる権利を渡すことを承諾してもらったのだ。アリス・クーパーは、自らのライブにマクドナルドさんを招き、一緒に大きな赤いクリップを持ち上げるパフォーマンスを披露している。ちなみに、このフェニックスの家には、従業員の女性が住むことになったのだ。

このアリス・クーパーと半日過ごす権利は、ロック好きでアリス・クーパーの大ファンというオハイオ州に住むマーク・ハーマンさんの手に渡った。引き換えに手にしたのは、米ロックバンド、キッスのスノーグローブ(球体のなかに雪が舞うように見える置物)。ちょっと価値が下がったような気もするけど、マクドナルドさんは「ぼくが求めているのは100万ドルではなく、今ぼくの持っているものを欲しがっている人を探すことなんだ」とし、アリス・クーパーと半日過ごす権利をハーマンさんに渡したことを素直に喜んでいるようなのだ。

このキッスのスノーグローブは、映画「メジャーリーグ」シリーズなどで知られる俳優のコービン・バーンセンへと渡された。真偽のほどは定かでないのだけれど、コービン・バーンセンは偶然にも自称、地球一のスノーグローブ収集家だったそうなのだ。このスノーグローブと交換に、マクドナルドさんはすごいものを手に入れた。なんと、この秋撮影されるハリウッド映画「Donna on Demand」への出演権! 6月にコービン・バーンセンが住むカリフォルニア州へ赴き、握手で交換している。

そして、ついに念願の一軒家を手に入れるときが来た。約1100平方フィート(約102平方メートル)の土地に建つ2階建て3LDKの家(写真はコチラ)で、場所はカナダ・サスカチュワン州のキプリング(位置はコチラを参照)という町にある。この申し出を行ったのは、キプリング市長。なんで市長が映画の出演権を欲しがるのか、マクドナルドさんは疑念を抱いたそうなのだけど、この市長がかつてブラッド・ピットやハル・ベリーと映画で共演していることを突き止めたのだ。また、キプリングでは、この権利を使って出演者のオーディションを開くのだとか。マクドナルドさんを引き入れることも含めて、町興しが目的なのかな。ちなみに、このオーディションにはコービン・バーンセンも招かれるのだそう。

キプリングは町を挙げてマクドナルドさんを歓迎しており、商工会議所から現金200ドル(約2万3000円)が贈られるほか、一日名誉市長、生涯名誉市民に任命するほか、交渉成立日(12日が予定されている)を「One Red Paperclip Day」という記念日に定め、住民に赤いクリップを身に着けるように奨励するのだそう。うーん、この上ない熱烈歓迎ぶり。マクドナルドさんは9月初旬にも、恋人のドミニク・デュピュイさんとともにこの家に引っ越す予定で、引っ越したらまず家を赤く塗ることを考えている。

こうして、「バカみたい」と言われそうな夢をたった1年で達成したマクドナルドさん。ニュースで報じられたりテレビのトークショーに出演したりなど、当分は忙しい日々が続きそう。最後の一軒家を手に入れたあたりはどうも不純な感じがしないでもないのだけれど、それは相手の事情であってマクドナルドさんには関係のないこと。ネット世代ならではの“偉業”達成を祝福したいのだ。

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