73年間湖に沈んでいた名車、競売出品で1,000万円以上の価格予想も。

2010/01/14 10:57 Written by Narinari.com編集部

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昨年7月、スイスのある湖の底から、73年間も放置されていた車が引き上げられた。車体はうっすらとボディが青だったことをうかがわせる程度までサビで覆われ、車体の半分は骨組みを残すのみというほどの朽ち具合。普通の人が見ればただの鉄くずにしか見えない車だが、実はこれ、生産台数が極めて少ない名車だったことから、地元や自動車ファンから大きな関心を集めることになった。なお、車は1月23日に競売への出品が予定されており、英紙デイリー・メールは8万ポンド(約1,200万円)の値が付くと予想している。 

今からさかのぼること約100年前の1909年、1人のイタリア人技術者が自動車メーカーを立ち上げた。男の名はエットーレ・ブガッティ。ボディやエンジンの設計を手掛け、後に多くのカーレースで結果を残し、その名を轟かせた人物だ。第二次大戦前までブガッティは次々と車を開発したが、性能と美しさを追求し続けた結果、生産された車の台数は多い車種でも数百台程度。そのため、現在でもブガッティは希少な名車として、世界中の自動車ファンから愛されている。

そんなブガッティの「ブガッティ T-22ブレシア」と呼ばれる車種が今回話題の車。場所はスイス南部のマッジョーレ湖で、デイリー・メール紙によると、もとの所有者は、湖のほとりの街アスコナで1920年代に働いていた建築家の男性だという。

車はフランスで購入されたもので、男性は税務当局から輸入税を支払うよう再三警告を受けていたが、これに応じず。しばらくして男性はチューリヒへ引っ越してしまったが、問題のブガッティはアスコナに残したまま放置されたそうだ。そして、11年も督促しながら税金を徴収できなかった当局は最終的に車を没収し、当時の中古価値が低かったことから、法律に従って湖にそのまま沈めてしまった。

それから水深50メートルの湖底でひっそりと時を過ごしてきたブガッティが、再び注目されたのは1967年のこと。湖に潜ったダイバーが沈んでいる車を発見し、以来、地元のダイビングクラブのメンバーが定期的に確認していた。そんなクラブに2008年、不幸が訪れる。クラブメンバーが若者の暴力によって命を落とす事件が起き、これを受けてクラブは暴力事件をなくすために活動する慈善団体を設立。その運営資金として目を付けたのが、沈んでいたブガッティだった。

70年以上も水中に沈んでいただけに腐食が進み、昨年引き上げられた時点での車体残存率は20%程度。それでもメーターの一部やエンジンなどは形を残しており、「コレクターや博物館が買いたがっている」(デイリー・メール紙より)という。

競売の担当者は「当局がそのまま湖に沈めたのは、最高の方法だった」と、結果的に原型をとどめる形で後世に遺されたことを喜んでいる。冷たい湖底で長い年月を過ごしてきたブガッティもこれからは大事に保存され、温かく見守られていくことになりそうだ。

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