「ゲイ」がテーマの絵本、米国の小学校で波紋呼ぶ。

2006/11/17 15:30 Written by Maki K Wall@駐米特派員

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以前このNarinari.comで、「ゲイのペンギン」についてのコラムを執筆したのですが、それを覚えていてくださる方がいたら、ウォール真木も大変嬉しゅうございます。ドイツ北部のブレーマーハーフェン市営動物園に住む、フンボルト・ペンギンのカップル3組に、何故か卵が生まれず不思議に思った職員が調べたところ、なんと全部オス同士だった……。しかし動物園としては彼らを引き離すことなどせず、今後も見守ることにした、という温かいオチが付くお話だったのですが、このゲイのペンギンというのは、実は他の動物園でも確認されているそうなんです。まあ、同性愛自体が自然界でも珍しいことじゃないって事実が研究で確認されていますし、驚くことではないんですが。

なにはともあれ、ゲイのペンギン・カップルはニューヨーク市セントラル・パーク動物園で世話されていたサイロとロイというヒゲペンギン。両方ともオスなのですが、いつしか一緒に寄り添ったり巣を作ったりと「夫婦」として生活し始めたのです。その後周囲のペンギン・カップルたちが繁殖期に入り卵を産んで温めると、彼らも卵に似た石を見つけてきて、温める仕草を見せたりしたのだとか。その一途な姿に心打たれた飼育係が、他のペンギンが世話しきれない卵を彼らに与えたところ、見事赤ちゃんが誕生。後に同動物園で誕生した、他のゲイ・ペンギンたちの見本ともなったそうです。

で、この実話にもとづいた絵本 "And Tango Makes Three" があるのですが、これは対象が幼稚園から小学校低学年の子供たち。お話自体はかわいらしいペンギンの心温まる子育てストーリーなんですが、しかしゲイがテーマを幼い子供に読み聞かせるのはどうか? という保守的な意見もまだ多いアメリカ。ウォール真木の住むミズーリ州のお隣、イリノイ州のシャイロという町でもこの絵本が小学校の図書館に置かれているということで、論議をかもし出しているそうです。同校に通う生徒の一部の親たちは、この本はまだ子供には適していないとして図書館からの破棄を希望。学校の「子供たちに多様なテーマの書物を提供することは大切」というスタンスを真っ向から否定しています。

しかし同性愛だろうが異文化だろうが、自分とは違うからという理由でその存在を無視されるのは悲しいなと感じます。個人的な経験ですが、ウォール真木は長女が小学校に通い始めた頃、彼女が持っていく日本風のお弁当が理由で茶化されたりしないかと心配してたことがあります。そんなある日、ふと覗いた学校の図書館に "Yoko" という絵本が入ってすぐ目に付くディスプレイ棚に並んでいるのを見付けました。

日本からアメリカに移民してきたYokoという猫が、お母さんが作ってくれたお弁当をもって学校に行きます。でも日本の食べ物など見たこともない他の生徒たちは、それを「変だ!おかしい!」と騒ぎ立てます。心ない言葉に傷を受けたYoko。それを心配した優しい先生が知恵を絞り文化の溝を埋めようと努力するのです。そのお陰で後日、日本食に興味を持つ親友ができたYokoは、毎日その友達とお弁当を交換しながら楽しいランチタイムを送るようになったのです。

この図書館に置いてあった絵本で、母としてどれだけ救われたことか(涙)。その後も教頭先生がわざわざ長女のところにやってきて、「あなたのランチは『世界一ワンダフルな弁当』なのよ」と褒めてくれたり、学校はちゃんと長女を気遣ってくれていたんだなぁ。マイノリティの文化を、こうやって理解しくれる姿勢って本当ありがたいです。

例のゲイの絵本だって、同性愛の理解を深めるためのとっかかりになるハズ。排除などといわず、どうか子供たちに世の中いろんな人がいるんだよ、と教えてあげて下さいまし。

あ、最後にちょっと残念な後日談。サイロとロイは6年間も連れ添ったというのに、2005年に破局。原因は動物園に新しくやって来たメスのペンギンだったとか。サイロの方が目移りちゃったらしいですよ……。あぁ、がっくり。

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