ファン・ビンビン魅了した日本の若き天才マジシャン

2018/05/31 14:24 Written by Narinari.com編集部

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2017年12月1日に放送された中国・江蘇テレビの人気マジシャン対決番組「超凡魔術師(ザ・アメイジング・マジシャンズ)」。番組では当初の予想を覆し、日本の若き天才マジシャン・高橋匠(24歳)が頂点に立った。世界の名だたるマジシャン、地元中国の人気マジシャンを退けるとともに、審査員として出演していた世界的女優であるファン・ビンビンの度肝を抜いたマジックとは一体どのようなものだったのか。あの戦いから半年が過ぎた今、本人に振り返ってもらった。

高橋は昨年11月、番組撮影のために江蘇テレビのある南京市に入ったが、番組に出た経緯については「本当に偶然」と語る。番組関係者はもともと日本人マジシャンを探していたそうだが、その時期、日本ではちょうど「FISM」アジアというマジックの大会が開催されており、出演できる日本人マジシャンがおらず、流れ流れて高橋にオファーが舞い込んできたからだ。

それでも高橋はそのオファーを一度辞退。「テレビで披露できるような面白いマジックができない」という単純な理由だった。高橋は「断った後、少し後悔した」と言うが、その後、目を疑うような出来事が起こる。翌日朝、目を覚ますとスマホにメッセージが入っており、「もうあなたに決めました。明日来てください!」と半ば強引に中国側が高橋の出演を決めてしまったのだ。

日本では有り得ないかもしれないが、こうして急遽「超凡魔術師」への出演が決まった高橋。出演に至った経緯もそうだが、本番までの苦労も絶えなかったそうで、「計7日間中国にいたのですが、撮影までの6日間はずっと練習していたんです。やることがまったく決まっていなかった」と内情を明かし、ディレクターから「もっと番組に合ったマジックを披露してください」「それはダメ、あれもダメ」などと“ダメ出し”が連発したとのこと。今となっては冗談で済む話かもしれないが、実際「本番15分前まで披露するマジックが決まっていなくて、追い詰められました」というから驚きだ。

そんな紆余曲折が続いた中、高橋はドイツのBen pfofane氏、アメリカのNathan kranzo氏、カナダのMahdi gilbert氏ら世界的マジシャンとマジック対決を繰り広げる。高橋が披露したのは自身の師匠であり、そして世界的に“カードマスター”として知られるレナート・グリーン氏から伝授されたカードマジックで、その華麗なカードさばき、そしてトリックに観衆は圧倒される。

番組はネットでも配信され、3番手で登場した高橋には当初「とっとと南京から出ていけ」「日本人は嫌いだ」などと辛辣なコメントも相次いだが、マジックを披露し始めると事態は一変。「スキルがすげぇな」「タネがぜんぜんわからない」「日本人は嫌いだが、彼のマジックには敬服せざるを得ない」などと絶賛コメントが殺到した。そして高橋はタレントやプロのマジシャンで構成された5人の審査員から50点満点中48点という高得点をつけられ、外国人マジシャン代表として地元中国のマジシャンと争う決勝戦に進出。完全アウェーというハンデを乗り越え、審査員や観衆の心を鷲掴みにし、優勝という栄冠を手にしたのだ(※最終戦は300人の観衆による投票で決定)。

高橋自身「中国のテレビ番組なので、内心、中国のマジシャンが優勝すると思っていました」と驚きの声を漏らしているが、番組を観ていて印象的だったのは、高橋がマジックを披露する前に指のストレッチで信じられない角度に指を曲げてみせ、ファン・ビンビンら審査員を虜にしていたこと。マジックはショーとして観衆をいかに楽しませられるかが重要な要素で、マジックとは直接関係ないとは言え、審査員と観衆の関心を上手に集めたことが快挙の後押しとなったようだ。

ただ、そんな高橋にも唯一の“心残り”が。それは女優のファン・ビンビンと一緒に記念写真を撮影できなかったこと。「ボディガードがついていて、ぜんぜんスキがなかった。すぐに帰っちゃった」と苦笑し、その話し振りや表情にはどこにでもいる20代の日本人青年らしさが漂う。

今後の課題について高橋は「クロースアップ・マジック(※少人数の観客に対して至近距離で演じるマジック)だけだと限界を感じてきているので、今はステージマジックも勉強しています」と明かし、現在はマギー司郎やマギー審司の映像を見たりしてそのトーク力やプレゼンテーション力を研究しているとのこと。レナート氏の唯一の弟子としてカードマジックのスキルを後世に伝えていく使命を担っている高橋だが、プロのマジシャンとして“生き残り”をかけた戦いは休みなく続いているようだ。

高橋は来たる6月2日・3日に東京・六本木のニコファーレで開催される「オズマンド・ウルトラ・マジック・フェス 2018」に出演予定。アメリカ・ラスベガスで20年以上単独ライブ上演中のマック・キング(アメリカ)、“マジシャンのオリンピック”とも言われる「FISM」でアジア初のグランプリ覇者となったユ・ホジン(韓国)ら世界的なマジシャンが集うマジックショーだ。中国で一躍ヒーローとなった高橋がどのようなスペクタルを披露してくれるのか、楽しみにしよう。

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