マーベルと“1分”で大型契約結んだ日本人社長

2018/05/02 23:32 Written by Narinari.com編集部

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映画やテレビドラマ、アニメなどでおなじみの「プロダクト・プレイスメント」(※劇中にスポンサー企業の商品や会社名をさりげなく登場させ、観客や視聴者に宣伝する広告手法。以下「PP」)。3月に公開されたマーベル映画「ブラックパンサー」にも主人公の専用車として「レクサスLC500」(トヨタ)が登場しているが、あれも「PP」だ。トヨタから映画会社には“大金”が支払われたのは当然だが、そうは言っても「PP」の実情はなかなか見えてこないもの。そこで今回、「ブラックパンサー」と同じマーベル作品の「アベンジャーズ」(2012年)で「PP」契約を結んだ日本の医療機器メーカー、コラントッテの社長に話を伺うことにした。

――御社は映画「アベンジャーズ」とタイアップされ、アイアンマンのトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)が身につけるブレスレットを提供しています。契約に至った経緯を教えていただけますか?

小松克巳社長(以下 小松):マーベルとの契約のお話をする前に弊社の歴史を簡単に紹介させてください。実はアメリカには(マーベルとの)契約前から進出していまして、アメリカのゴルフ商品の展示会などにも出展したりしていたんです。それで、ブッチ・ハーモンさんやデビッド・レッドベターさんというゴルフ界の2大コーチと同時契約したんです。そのことが世界に進出するきっかけになっています。そうした背景があったのですが、突然、当時マーベルの副社長であったボブが訪ねてきたんですよ。来る前から契約の話は大体聞いていたんですけど、「アイアンマン」は知っていたんですが、「アベンジャーズ」というのはまったくわからない状況で、「ヒーローが集まる」と言われてもピンと来なくて。「契約金はいくらです」とごっつい金額を提示されたんですが、ちょうどその時は「CO」というウチのロゴを作ったときで、「これはチャンスやないか」と思って1分で決めました。

――1分!? 

小松:そう。彼らが来て、話聞いて、「面白そうやな」って思って。1分でやると決めたんですけど、同時に我々の要求を羅列して伝えたんです。それでいろいろなことを考えるじゃないですか? 「劇中に商品を出してほしい」とか。映画を観てもらえばわかりますが、うちのビルも出ているじゃないですか。あれもパースを描かせて「こんなロゴをつけてほしい」と要望を述べたりしたんです。それであれこれ述べている内に言うことがなくなってきて。最後は「俺も出して」って(笑)。ほんなら通ったんです。

――確かに映画では小松さんだけでなく、ご家族(奥様&娘さん)も「アベンジャーズ」に出演(敵が地球に侵略してきたときに、逃げ惑う市民の役。予告編動画を参照 //www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=Z4I4iu4fdP8 の1:34あたり)されていましたね。

小松:契約後、ニューメキシコでスポンサー企業集めのイベントがあったんですが、我々もそれに参加していて。ヨーロッパで映画館を運営している企業とか、アメリカの大手飲料メーカーとかも参加していたんですけど、ウチらはもう契約が決まっていたので、別件の話があったんです。それが「アベンジャーズ」のゲームのスポンサーで。これもごっつい金額だったんですけど、ちょうど僕の娘が翌日誕生日だったので、「僕だけじゃなく娘も映画に出してくれへんか?」って言ってみたんです。そうしたらマーベル側は「ぜんぜんOKですよ!」と快く受け入れてくれて。それで「でもうち3人家族やねん。奥さんどうなるの?」と聞いたら、「当然3人でしょう!」って(笑)。その日はすごく天気が良くて、娘の誕生日プレゼントも決まったので、「じゃあ(ゲームの契約も)するよ」って。そうしたら場が「ワー!」と盛り上がって、ボブは僕のことを「ブラザー」と呼ぶようになって(笑)。ボブとは今でも食事に行ったりする仲が続いてますね。

――こうしてお話を聞いていると、契約に至るまでの経緯が想像とぜんぜん違うのですが(笑)。

小松:だから言われましたよ。うちのアメリカのスタッフも言ってましたけど、マーベルの人が「日本人の見方が変わった」って(笑)。撮影もものすごく面白かったです。クリーブランド(オハイオ州)での撮影だったんですが、ウチらは確か7〜8人で入って。マーベルが英語のできる日本人をひとりサポートでつけてくれたんですが、毎日エキストラが600人ぐらいいるんですよ。普段はランチであれば、自分でパンに肉を挟んでハンバーガーを食べたりするそうなんですが、僕らは「こっち来てください」って言われて。レストランに入ると、NYから寿司職人を3人連れてきたそうで、その場で寿司を握ってくれたんです。普段はみんな寿司なんて食べられないじゃないですか? だからみんな僕のところに順番に挨拶に来て「ミスター小松のおかげで寿司が食べれる」って(笑)。

――撮影自体はどんな雰囲気でしたか?

小松:僕は日本の映画撮影現場にも足を運んだことがあるんですが、まぁ規模が違いすぎですね。3ブロック分のセットを作っているですが、昼間に平気で爆破したりするんですよ。その上では普通に働いている人たちがいるのに。ビルの上からみんな携帯で撮影してましたね。燃えている人間がタクシーの上に乗って走るシーンとかあって、何遍も撮っているんですよ、燃えているのに。でも、そこは一切映画に出てなかったです(笑)。だから僕は現場を見させていただき、映画はどれだけ「切っていくか」ということなんだと思いましたね。日本人のエキストラも呼んで撮影していましたけど、それも一切映っていなかった(笑)。

――少し話を戻しますが、トニー・スタークが身につけている御社のブレスレット「マグチタン NEO レジェンド」についても教えてください。

小松:これはうちのほうでデザインさせていただいたんですけど、やっぱり「アイアンマン」のイメージですよ。「アイアンマン」の顔っぽいじゃないですか。これのベルト版がその前にあったんですけど、それを改造して作ったんです。そうそう、このブレスレットで感動的なことがあったんです。これ名前が「レジェンド」じゃないですか? 劇中でトニー・スタークが装着するシーンで、商品名の「レジェンド」とかけて「レジェンド」って発言してくれているんですよ(※トニー・スタークがロキと対峙し、ロキの兄のソーについて「レジェンド」と発言している)。マーベルが勝手にやってくれたんですが、知ったときは「やってくれてるやん!」と思いましたね。ウチの商品が実際に映画に登場したときは感動しました。

――「PP」で実際に商品を映画に登場させた結果、その後の売れ行きとかはどうでした?

小松:知り合いの中国人に「映画に登場させて何個売れるか?」って聞いたら、「1億個売れる」って言われたんですよ。この商品は2万円近くするじゃないですか。だから仮に1億個売れたら2兆円になるんです。でもね、やっぱりダメなんですよ。そんなに「物」って売れるもんじゃないから。

――ではかなりのお金を出費してマーベルと「PP」契約を結び、今になって客観的にどう思われていますか? 後悔されていますか?

小松:いや、良かったですよ。すごい財産ですよ。お陰でテレビの取材もたくさん受けたし、いい宣伝になりましたもん。ただ、次回やるなら“変身”に使うんじゃなくて、 ロバート・ダウニー・Jrにアウディに乗ってコラントッテショップにピュッと来てもらい、買い物してもらえたら普通にバァーって売れるでしょうね。CG使って光ったりさせんでも(笑)。あとはウチの商品を実際にあるものとして部品として登場させてもらうとか。キアヌ・リーブス主演の映画「スピード」(1994年)でG-SHOCK(カシオ)がものすごく売れて、今でも売れているじゃないですか? 時計がぼんぼん映るじゃないですか。あんな風にお願いしたいかな(笑)。

そんな小松氏は現在、アメリカを舞台にしたオリジナル映画を制作すべく、プロモーションをかけている真っ最中。また、その映画を題材にした本の執筆も準備しているそうで、それにはマーベルとの「PP」から生まれた“人脈”もフル活用されているという。一言で「PP」と言っても、企業側の狙いは実にさまざま。単純に売上が伸びたかどうかだけで判断するというのは、第三者の勝手な意見なのであろう。

余談だが、「ブラックパンサー」に登場する武器商人ユリシーズ・クロウはコラントッテのネックレスを身につけている。あれは「PP」ではなく、コラントッテにも一切知らされていなかったとのこと。小松氏自身「知って驚きました」と口にしていたが、もしかしたらマーベル側の細やかな“お礼”だったのかもしれない。


◎商品情報

『アベンジャーズ & アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン セット』
ブルーレイセット/6,000円+税、DVDセット/4,000円+税(5月31日までの期間限定出荷)
『アイアンマン2』、『マイティ・ソー』、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』MovieNEXで新登場/各4,000円+税
※上記以外のMovieNEXも、期間限定のオリジナル アウターケース付きで発売中(9月28日までの期間限定出荷)
デジタル配信中。

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