ピクサー作品における“技術的進歩”

2017/11/18 21:31 Written by Narinari.com編集部

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今夏日本でも公開されたディズニー/ピクサーのアニメーション映画「カーズ/クロスロード」。天才レーサー・マックィーンの活躍と転機、そして仲間たちとの絆を描いて話題となった同作は、業界最高峰のCG技術や表現方法が多数用いられていることでも注目を集めている。そこで、今回は約10年間にわたる「カーズ」シリーズの“技術的進歩”に着目。ピクサーのクリエイターたちに解説してもらうことにした。

話を聞かせてもらったのは、「カーズ/クロスロード」のスーパーバイジング・アニメーターのボビー・ポデスタ氏、エフェクト・スーパーバイザーのジョン・ライシュ氏、スーパーバイジング・テクニカル・ディレクターのマイケル・フォン氏の3人。

今回の取材にあたり、あらためて「カーズ」「カーズ2」を見返してみて驚いたのが、どちらの作品もかなりの完成度を誇っており、映像面で決して古びた印象を受けないこと。最新作と比べても遜色ないクオリティで、一体この10年間にどのような“技術的進歩”があったのかが具体的によくわからない。そこで、正直にその点をぶつけてみると、「カーズ/クロスロード」でエフェクトを監修したジョン氏は「エフェクトでどれほど多くのことを成し遂げたことか。例えば、埃のモデリングとか、泥の相互作用とか、(最新作に至るまでには)いろいろなことが洗練されたよ。僕たちは、昔よりも多くのものをスクリーン上で表現することが出来るようになったし、もっと多くのものをスクリーン上で描きたいんだ」と“違い”を強調する。

マイケル氏も「僕たちは、光が表面とどのように相互作用するか、その計算方法をかなり変えてきた。僕たちが今やっているのは“パス・トレーシング”というものだ。どういうことかと言うと、反射や屈折とか、光とのすべての相互作用について考えるとき、以前は多くの作業をして反射が正しく見えるように見せかけていたんだ。例えば、光がガラスに当ったとすると、光が屈折しているように見せかけていたんだ。それはとても大変だった。今では、光がどのように移動して、表面で反射し、ガラスを通過するか、もっと良いモデルがある。つまり、もう見せかけなくてもいいんだ。僕たちは、見せかけるのがうまかったから、(お客さんは)見せかけだとは分からなかったと思う。でも、今の映像と比べると全然違うんだ。今はもっとリアルで、触ることができそうな世界なんだ」と語り、エフェクト面での過去と現在の手法の違いを明らかにしてくれた。

しかし、“光の反射や屈折”と言われても、素人にはわかりづらいところ。そこで、「1」と「クロスロード」を比べ、今だからこそ映像化できたシーンについて聞いてみた。

すると、ジョン氏は「間違いなく、サンダーホロウのデモリッション・ダービーのシーンだね。10年前の僕たちには液体や泥そのものをシミュレーションするツールがなかったから。それはこの10年間くらいに開発されたテクノロジーなんだ。それに、このシーンのエフェクトの量もすごいんだ。ほぼすべての映像内に埃も泥もある。破片も舞い上がっている。さらに、次に何が起きるのか分からない混沌としたシーンだ。短編映画とも言えるような7分くらいのすごく長いシーンだから、とにかくたくさんの仕事量だったよ」と自信たっぷり。

ボビー氏も「ピクサーは、出来る限り最高のクオリティにするために、常に自分たち自身を駆り立ててきたんだ。なぜなら、自分たちが作った作品を何十年後も見てもらいたいからね。出来る限り最高の作品を作ると、作品が色あせないものなんだよ」とし、自身も過去のピクサー作品を最近見て、いまだに素晴らしいレベルであることに驚いたエピソードを明かしてくれた。

とにもかくにも、「カーズ/クロスロード」をもう一度観るなら、デモリッション・ダービーの“泥”に注目だ。

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