俳優“復帰”の根津甚八が胸中「未練を捨てて、終止符を打てたと思う」。

2015/04/17 10:17 Written by Narinari.com編集部

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2010年に俳優活動から引退した根津甚八(67歳)が、石井隆監督の映画「GONIN サーガ」で復帰することがわかった。復帰は本作のみ、1回だけで、最後の“俳優・根津甚八”を終えた胸中を寄せた。

本作は石井監督作品の中でも絶大な人気を誇り、バイオレンスアクションの傑作として知られる「GONIN」の19年ぶりの新作。根津は前作「GONIN」(1995年)にて汚職で警察をクビになった元刑事・氷頭(ひず)を演じ、ラストでビートたけし演じる京谷の銃弾を受けるが、本作ではそれから19年後、銃弾を受けながらも生死の境をさまよい、植物状態で生きていた“GONIN”最後の一人として登場する。

根津は俳優業を続ける中で体調を崩し、その後、2001年には右眼下直筋肥大の病気で複視を患いながらも活動を続けていたが、映画「るにん」(2004年/奥田瑛二監督)の出演を最後に、役者としての活動を休止した。その後、復帰のためのリハビリとトレーニングを続けていたが、2010年に発行された書籍「根津甚八」の中で、事実上の俳優業の引退を表明。しかし、「“氷頭は生きていた”を糸口にした『GONIN』のその後を根津さんとどうしても撮りたかった」という、監督からの想いのこもったオファーを受け、根津もそれに応える形で本作への出演を決意、映画出演50作目の作品として11年ぶりに映画へ出演する運びとなった。

根津は今回の復帰について、次のようにコメントを寄せている。

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自分自身が志すような演技者であることが、困難になったため、引退を決めたが、今回、石井監督自ら、自宅に来て丁寧に『どうしても手伝ってほしい、根津さんでなければ……』という殺し文句と『出来るか出来ないか脚本を読んで決めてほしい』という熱心な説得で、本をじっくり読んで、これなら、今の自分に出来るという気持ちがわいてきた。

今迄の石井監督へ感謝の気持ちもあり、素直な気持ちで、今一度、自分自身を試してみようと思った!

撮影が始まってからは、久しぶりの撮影現場の空気に気持ちが高揚して、自分はこの仕事が心底好きなんだと改めて感じた。

自分の為の、セット作りも大変だったと思うのに、無理のないようにと細やかな心遣いをして、いただいた。心からの、お礼を言いたい。

全ての撮影が終わった後、若い役者達が車まで追いかけてきてくれた。皆と握手をして、車が見えなくなるまでずっと手を振って見送ってくれたことが忘れられない。そして、完成された作品を見て、素晴らしい役者達に恵まれた映画になったと心から、思えた。

最後に……石井監督でなければ、この仕事は受けなかった。自分を理解してくれ、役者としての自分を最大限に生かしてくれると無条件で信頼できる人。

天が再び機会を与えてくれるものなら、仕事を続けたかった思いももちろんある。でも、監督や共演者を始め、スタッフ全員の支えがあって、やり遂げたことで、未練を捨てて、終止符を打てたと思うし、そう思える機会を与えてくれた方々に深く感謝している。

根津甚八

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また、石井監督も、根津の復帰にコメントを寄せている。

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出逢いは赤テントで間近に見た“根津甚八”で、僕が監督二作目の『月下の蘭』で幸運にもご一緒出来た時には“ハードボイルドが似合うアクションスター根津甚八”だった。

以来、僕の劇に同居するハードボイルドな村木と思索型の村木、僕にとっての“二人の村木”と何本映画を撮ったのか。撮影で落馬して腰を痛めているからとベルトを巻いて現場に出ているのを知っていたのに、ハードなアクションシーンで何度もテストをやるものだから、『石井組は何時もこれだよ、シンドイ』と、あの目で笑いながら、あの声で言われたものだ。

そんな根津さんとどうしても撮りたかったのが、“氷頭は生きていた”を糸口にした『GONIN』のその後で、僕は随分前にその脚本を書き下ろしていた。だから根津さんが体調不良と言うのはメールのやり取りで知っていたが、突然の引退のニュースは無念だった。しかし、奥さんが著した『根津甚八』、そこに載っていた車椅子に腰をかけ、窓辺で佇んで外を見ている陰影の深い根津甚八の近影――そこには大スター・根津甚八が居るではないか。

僕は迷惑も顧みず、取り憑かれたように根津さんに何度目かのオファーをしていた。スクリーンの中で根津甚八に再会したかったから。だが正直に言えば、「思うような芝居が出来ない」と引退した根津さんの気持ちを知るだけに、再び一緒に映画の現場に立ちたいという僕の思いは、根津さんに会うまで引き裂かれていた。駄目だったらこの物語は僕の中で葬ろう――そう思っていた。ところが、根津さんは受けてくれた。

凄い! やはり根津甚八はどこまでも役者・根津甚八だ、僕は現場で皆からなんと思われようとも、役者と監督と言う形で向き合わなければ失礼だ、と心に決めて現場に臨んだ。根津さん、もう一回! もっと粘って! っと!もっと! と、“根津甚八の今”を撮るのが恩返しと思って現場で叫んでいた。

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共演者たちからのコメントは次の通り。

◎東出昌大 主演:久松勇人(ひさまつはやと)役
GONINの五人目が、根津さん(役名、氷頭)だと初めて聞いた時は、映画ファンの皆さんと同じように驚嘆しました。
病院のシーン。テストをするかと監督が根津さんに確認すると、「本番」と一言仰有り、現場は並々ならぬ緊張感に包まれました。
這う格好の氷頭が僕らを睨み、台詞を一言。
氷頭のあの迫力に圧倒されたその時、現場で声を荒げたり怒鳴ったりした事のない石井監督が「氷頭さん顔上げて」と叫ぶ様に演出をなさいました。ご病気で麻痺の残る根津さんに叫ぶ監督の声は、自分の身も引きちぎる思いと共に叫んだ声なのだと瞬間に理解しました。
その日の帰り、根津さんのお車を送り出す時、僕は何も言葉が浮かんでこなかった事を覚えています。
感動とか、言葉にするだけ無駄な思いを、根津さんと共演させて頂き、感じました。


◎桐谷健太 大越大輔(おおごしだいすけ)役
役者として、これまで歩んできた道で気づけた事、これからも血がかよった役をまっとうしていきたいとゆう想い。その真ん中で、今回根津甚八さんと いう役者と出逢えた事や現場を共にできたことは本当に素晴らしい経験になりました。
役者魂という言葉では足りないくらいの強く、しなやかな信念を僕たちに感じさせてくださいました。
役者って本当に最高だと、改めて想わせてくれた根津さんに心から感謝。
根津さん、石井監督、スタッフキャストの皆さん、本当にありがとう。また逢いたいです。

◎土屋アンナ 菊池麻美(きくちあさみ)役 
多くの人々から尊敬され、映画の世界でも素晴らしい実績を残されている根津さんとこの素晴らしいGONINという作品に共演でき嬉しく思います。今回の作品での彼の演技は誰もが鳥肌を立ててしまうくらい感動するのではないかと思います。根津さんという1人の才能の持ち主とご一緒できて光栄です。


◎柄本 佑 森澤慶一(もりさわけいいち)役
初日、現場に入られた根津さんのお顔が紅くなっているのを見て「あっ緊張してらっしゃる」 と、思いました。しかし、1回目のテスト。監督の「よーい」の声がかかった途端、 みるみる顔から緊張が消えていき、間違いなく氷頭要の狂気が浮かび上がってきました。驚きました。しかも、表情だけでなく「よーい」を聞 いた途端根津さんの中で何かが沸騰していくような、湧き上がってくるようなものを自分も間違いなく感じたんですものっ。それからは撮影が 進んでいくうちにどんどん若々しく、瑞々しくお顔もどこか端正になられていく根津さんの表情を見て役者…いや、それを通り越して人 間ってすげぇなと実感しました。根津さんと共演させていただけたことは自分の中で財産となりました。ありがとうございます。試写を観させ ていただいきましたが・・・根津さんマジで1番カッコ良かったっす!!


◎安藤政信 式根誠司(しきねせいじ)役
石井作品での根津さんの演技は全ての芝居がもう完璧と言っても言い過ぎじゃないと思っていました。
石井監督と根津さんの二人の間の深い愛を石井作品ファンとして現場で見れたこと、そして全てをさらけ出す根津さんの役者としての姿に心を掴まれました。二十代半ばで根津さんと共演してからまた再会できたことが凄く嬉しいです。

勉強になりました。ありがとうございます。


◎二宮直彦プロデューサー
監督の最も拘ったキャスティングでした。
しかし根津さんは俳優業を引退されており、監督がご自宅まで行かれて直接口説かれご出演の快諾をい ただきました。
根津さんも相当な覚悟でお受けになられたと思います。
現場にいらっしゃった根津さんはまさにGONINの【氷頭 要】として役に入りこまれており、凄味を感じました。
現実と映画が交錯し張り詰めた現場の空気の中、
最後の壮絶なアクションシーンはスタッフ全員が涙しながら撮りました。

これで新たな伝説のGONINが揃いましたね。
劇場の大きなスクリーンでご堪能ください。

映画「GONIN サーガ」は9月26日(土)TOHOシネマズ 新宿ほか全国ロードショー。

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