料理写真“味わう”時代間近? 電極を用いた味再現装置の開発進む。

2013/11/30 05:22 Written by Narinari.com編集部

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テレビやパソコンでおいしそうな料理を目にして、ついついよだれを垂らす――といった経験は、食いしん坊ならずともあるはず。しかし間もなく、実際に現物を食べられなくても、写真や映像を表示するだけで食べたい料理を“味わえる”時代がやって来るかもしれない。先ごろシンガポールの大学研究者グループが、電極の変化でいろいろな味を再現させる装置を開発したそうで、単純に楽しむだけでなく、医療的な補助道具としてなど、さまざまな活用が期待されている。

英科学誌ニュー・サイエンティストによると、この装置を開発したのは、シンガポール国立大学(NUS)のニメーシャ・ラナシンハさんらの研究グループ。ラナシンハさんは、慶應義塾大学とシンガポール国立大学が共同運営する「慶應-NUS CUTEセンター」で、2008年から味覚や嗅覚を再現するデジタル装置の開発に取り組んできた研究者で、今年10月にスペイン・バルセロナで開かれた会議上で、彼らが開発している“味再現装置”を披露した。

ラナシンハさんらが開発した装置は、銀の電極板2枚で舌の先端を挟み込むプロトタイプ。研究から、舌先に電気的な刺激を与えるとわずかな温度の変化で「主要な味を引き起こせると分かった」彼らは、塩味・甘味・酸味・苦味を体験できる装置の開発に成功した。ただし「うま味」の再現は依然研究中で、ほかにも食べ物を味わうのに重要な要素として「匂いや食感」の体感方法の研究と共に、開発作業をさらに進めているそうだ。

近い将来、「テレビの視聴者が番組で作られた料理を味わうことも可能になると思う」と話すラナシンハさん。彼の研究を紹介しているサイト(//nimesha.info/)には、インターネットを介した送信技術や棒キャンディー型の新たな装置の情報もあり、彼らの研究開発はプロトタイプからさらに順調な発展を続けているようだ。

彼らが開発した装置が実用化されれば、多くの人の楽しみとしてだけではなく、例えば「血糖値に影響を与えず糖尿病の人に甘さを体感してもらえる」など医療補助的な使い方にも期待できるという。

最近「甘い飲み物の過剰摂取が、アルツハイマー病やがんを引き起こす脳の変化を促すかもしれない」と発表したオーストラリアの研究者は、彼らの装置について、精神的な満足度に対する疑念は残るとしながらも「飲料を遠ざけるのには役立ちそう」と評価。米放送局ABCの取材に応じた研究者は「10年から20年以内」の実用化に期待したいと話しており、私たち一般市民が彼らの研究成果を体験できるようになる日も、そう遠くはないかもしれない。

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