“短気な白鳥”と湖で共生14年、人間にときどき見せる愛らしい一面も。

2013/10/12 13:15 Written by Narinari.com編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加


カナダとの国境に近い、米オハイオ州メダイナという街にある湖に、14年前に飛来して以来住み続けている1羽の白鳥がいる。“サミー”と名付けられたオスのコブハクチョウは、時には湖に近づく人に向かってくるほど攻撃的な一面を持っており、まさに“湖の主”といった趣。しかし地元住民たちは、慣れ親しんだ人たちにときどき見せる愛らしい一面を知っているため、湖の環境も守ってくれる大切な存在として、温かい目で見守っているそうだ。

米紙メダイナカウンティ・ガゼットによると、サミーが生活しているのは、オハイオ州メダイナにある広さ5エーカー(約2万平方メートル)の湖。この湖は、周辺で暮らす23人の住民たちによって所有されているそうだが、14年前からは誰もが、湖内に住み続けているサミーのモノと認めているそうだ。もはや、自分ですら強い縄張り意識を持っているというサミー。ある時は、湖に近づいた所有者の1人に襲い掛かり、「ハンマーで殴られたように」腕に1か月も残るアザを作らせたという。

また、近くに他の鳥が寄ってくるとほぼ必ず威嚇するほど攻撃的な一面も。しかし住民たちは、そんなサミーの存在をとても有難く思っている。なぜなら彼が攻撃的なおかげで、湖の環境保全に大いに役立っているから。湖には、北米地域で生息している鳥・カナダガンの群れが時々やって来るが、群れが飛来すると、病原体を含む排泄物で水が汚されてしまい、湖の環境に大きな影響を及ぼしてしまうそうだ。

そのため、住民たちはカナダガンを厄介な鳥とみなしているが、問題は渡り鳥の保護を目的とする米連邦法とオハイオ州法の存在。人の手で追い払おうと思っても法律で厳しく規制され、そう簡単な話ではないという。そのため、住民たちにとって、カナダガンを率先して追い払ってくれるサミーは“湖の救世主”でもあるのだ。

たとえ攻撃的な性格を持っていても、14年も暮らし続けているだけに、一部の住民たちとは打ち解けている様子のサミー。朝6時半、彼の1日は湖近くに住む住民宅の「ガラス戸をつつく」ことから始まる。そこは、やって来た直後から「かわいい」と彼に餌をあげ始めた男性の家。最初は湖に男性が出向いて餌を与えていたそうだが、「すぐに学んだ」サミーは男性の家を知り、自ら餌をねだりに向かうようになった。

ある時サミーに愛着が湧いた男性は、いつも1羽でいる彼を不憫に思い、「嫁を見つけてやろう」と、湖の別の場所にやって来たメスの白鳥を連れてきたことも。しかし、短気で頑固なサミーはメスの白鳥をあっさり追い払ってしまい、1羽での生活を選んだ。その後、白鳥が一夫一妻制であると知った男性は、何らかの理由で以前に「仲間を失ったのではないか」と推測。それ以来「彼は独身のままでいるつもりなんだ」と思うようにして、静かに見守ろうと考えたそうだ。

それでも繁殖期にあたる春になると、より攻撃的な性格を覗かせるというサミーだが、なぜか「近所の子どもたちが泳ぐのは大目に見て」静観しているという。また「白いものを突くのが大好き」というサミーの性格を知った住民たちは、何か作業をしようとする時にはサッカーボールや白いバケツを与え、彼を1日中遊ばせる方法も覚えた。

もはや、お互いに湖で楽しく幸せに暮らし続けるために理解し合う仲間同士の関係性を築いた住民たちとサミー。たまにはお互いの存在が疎ましくなる時があろうとも、「多くは愛で結ばれた関係」と話す住民たちにとって、もはやサミーは湖になくてはならない大事な存在となっているようだ。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.