30年間黙々と“木を植えた男”、今では広大な森林に多くの動物の姿。

2013/05/09 01:39 Written by Narinari.com編集部

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1979年、インド北部を流れる大河ブラマプトラ川の氾濫で、北東部に位置するアッサム州では大きな被害が出た。当時16歳だったある男性は、水が退いた後に暑さで死んだ生物が至るところで見つかる状況に気が付き、深く悲しんだという。そして木を植える必要性を感じた男性は、周辺住民の要望で伐採が進んでいた場所に、再び植林しようと決意。30年以上の活動を続け、今では約550ヘクタールもの広さを持つ森林が彼の手によって生み出され、多くの動物が棲息するようになったそうだ。

英紙メトロやインド紙タイムズ・オブ・インディアなどによると、植林活動を続けてきたのは、アッサム州ジョルハートに住むジャダヴ・パイェンさん。当時の洪水の後、干からびたヘビなど暑さで多くの生物が命を落としている状況を目の当たりにした彼は、人間の森林伐採がもたらした“虐殺”だと、泣いて悲しんだという。辺りには、動物たちが陽の光を遮るための木が全くない環境だったそうで、植林をしようと考えた16歳の彼は、すぐに行動を起こした。

そのために学校を辞めて家も出たパイェンさんは、ジョルハートから北へ川を渡った砂地に移住。そして周辺に木を植えようと許可を得るため、州の森林管理局に相談した。当初は「そんな場所では何も育たない」と興味なさげに対応したという職員も、彼の熱意に「竹を植えてみたらどうか」とアドバイス。そこでパイェンさんは、手始めに竹を植え始め、懸命に世話を始めた。

時には土の性質を変えるべく、噛まれながら大量の赤アリを運んだりもしたというパイェンさん。その甲斐あって、数年後に砂地は竹やぶへと光景を一変させた。その後も「誰も興味を持ってくれなくて、助けてくれる人もいなかった」ために、1人で黙々と植林作業を継続。かつて砂地で目立った生物もいなかった場所は森となり、いつしかハゲワシや渡り鳥も訪れ、さらにはシカや牛、サイやベンガルトラまで現れるようになった。

そして彼が作った森は、現在1,360エーカー(約550ヘクタール、東京ドーム約118個分の広さ)までに拡大したが、かつてアドバイスを送ったはずの森林管理局は、2008年になって初めて彼の努力の結果を知ったそう。政府の援助を受けながら、200ヘクタールの植林事業を行うための研究を2011年からやっと始めた州当局は、ずっと以前より、30年も1人で続けてきた彼の功績に「驚いた」と言い、「他の国だったら、彼はヒーローになっていただろう」と絶賛。地元でも森林や野生生物保護の動きが活発になってきたそうで、ようやく時代が彼に追い付いたようだ。

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