洪水で25年間水没していた街、かつては年間2万人が訪れる観光名所。

2013/03/23 09:10 Written by Narinari.com編集部

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首都ブエノスアイレスから南西に約350マイル(約560キロ)、アルゼンチンにあるエペクエン湖という湖のほとりに、かつて大変な賑わいを見せた街があった。しかし1985年、大雨で湖の堤防が決壊し、街ごと水没。以後、最高で深さ10メートルもの水の下に沈み、街は完全に地上から姿を消してしまった。ところが洪水から25年が経った2010年頃、覆っていた水が退き、廃墟と化した街が再び出現。そんな彼の地を“現代のアトランティス”として、最近複数の英メディアが紹介したことで、話題を呼んでいるようだ。

英紙デイリー・ミラーやインディペンデントなどによると、近年になって再び姿を現したのは、以前エペクエン湖沿岸に存在していたヴィラ・エペクエンという街。住民約1,500人が暮らしていたかつての街は、スパリゾート地として年間約2万人が訪れる観光名所だった。死海の次に塩分濃度が高いとされるエペクエン湖の水は、古くからリウマチや皮膚病、貧血や糖尿病などさまざまな症状に効果があるとされ、280もの企業がロッジやホテルを運営して観光客を集め、街は大いに栄えていたという。

そんな繁栄が終わりを迎えたのは、1985年11月10日のこと。大雨が続いた影響でエペクエン湖の堤防が決壊し、街全体が水没してしまった。当時の街に暮らしていた48歳の男性は、洪水に沈む直前に飼っていた犬や猫たちが突然姿を消したと振り返り、何らかの異変を感じていたという。「彼らは水が来ると感じていたのだと思う」と語る変化が見られた2日後、街は大量の水の底に沈んだ。

しかし25年の月日が流れる中で、最高10メートルを記録した水位は徐々に低下。2010年頃には、一度水の中に沈んだ、かつての街並みが再び姿を現したそうだ。YouTubeには、現れた街の様子を撮影した動画も複数投稿されているが、その中の1つ「Villa Laguna de Epecue'n - Buenos Aires, Argentina 1080p HD 2011」(//www.youtube.com/watch?v=hvuY0fR9JfQ)には、立ち枯れた無数の木や泥を被って崩れ落ちた建物の跡など、色を失った現在の様子が映されている。

すっかり廃墟と化したヴィラ・エペクエンだが、1人だけ洪水後も離れずに生活し続けた住民がいるそうだ。81歳のパブロ・ノヴァクさんは、ずっと1人で静かな時間を過ごし続け、「60年代や70年代の全盛期」を思いながら沈んだ街の様子を眺めてきたという。ただ、沈んでしばらくは誰も来なかったかつての街にも、最近は財産を取り戻そうとする元住民や観光客が訪れるようになったといい、少しずつまた人が来るようになってきたそう。以前のような活気を取り戻すのは難しいはずだが、“現代のアトランティス”にどのような未来が待っているのか、今後の変化が気になるところだ。

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