死期悟り娘と一緒にマラソンV、「思い出を」ベビーカー押して快走。

2013/03/21 18:37 Written by Narinari.com編集部

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2010年11月、当時30歳だった米国のある男性は脳に腫瘍が見つかり、医師から「40歳まで生きられれば…」と余命を告知された。自分の命がそう長くないと知り、4歳だった娘と「もっと一緒に時間を過ごしたい」と感じた男性。それから半年後、彼は病気から生活上さまざまな制約が生まれる中でも、走ることは問題ないと、娘をベビーカーに乗せて一緒にマラソンを楽しもうと挑み始めた。そして先日、テキサス州の大会に出場した彼は快走を見せて優勝し、娘をトップでゴールさせたという。

この男性は、3月9日にテキサス州ボーモントで開かれたマラソン大会に出場し、見事優勝を飾った32歳のイラム・レオンさん。米紙ボーモント・エンタープライズやニュースサイトのハフィントンポストなどによると、彼は2年半前、発作を起こしたことがきっかけで、ステージ2の脳腫瘍を患っていると判明した。診察した医師からは完全な回復は難しいと告げられ、「40歳まで生きることを目標に」と命の期限を明示されたという。そのとき、真っ先に頭に浮かんだのは、当時4歳の娘キアナちゃんのことだった。

キアナちゃんの母親である元妻と離婚して以来、大切な家族としてほぼ毎日、一緒に娘と時間を過ごしてきたというレオンさん。現在はまだ小さい彼女も父親の病気を受け入れ、彼に発作が起きた際は救急車を呼ぶ練習を行うなど、父親のサポートを頑張ってくれているそうだ。そんな彼女に対し、できるだけ不安を与えないよう気配りはしているものの、自分の病気に関する情報を共有してもらおうと説明すると、どうしても厳しい現実にも触れざるを得ず、「バランスが難しい」と父は苦悩の日々を送っているという。

ただ、いつか自分が人生の終わりを迎えるときに、「もっと子どもと一緒に過ごしたいとは言いたくない」とだけは心に決めているというレオンさん。病気の影響から、サッカーのような当たりの激しい一部のスポーツや、車の運転など、行動の制約も生まれて愛娘と一緒に遊ぶ余裕が減りつつある中で、彼はマラソンに目を付けた。自分が小さいときから大好きだったスポーツで、娘と一緒に楽しみたいと考えた彼は告知を受けた半年後、薬による副作用の吐き気と闘いながらトレーニングを開始。主催者にベビーカーに乗せた娘と参加する許可を得て、昨年10月からハーフマラソンの大会など積極的に出場するようになった。

そして3月9日、レオンさんはボーモントでのフルマラソンにキアナちゃんと共に挑戦。娘との参加に難色を示されながらも許可を受けて参加したとあってか、この日の走りはいつにも増して快調だったようだ。時折強く吹く向かい風に「ベビーカーが帆のように感じた」と苦しみながらも快走を続けたレオンさんは、2位に6分以上の差をつける3時間7分35秒のタイムでフィニッシュ。自身にとっても初めての快挙を達成した彼は、メダルを最初にゴールした娘の首にかけ、一緒に優勝を祝った。

愛娘と優勝を飾った彼の姿は、欧米メディアへも広がって大きな話題に。そして今回のマラソンを主催した福祉団体は、「実は反対した」(レオンさんのブログより)という彼の意見も押し切り、キアナちゃんの大学資金に役立てたいと3万ドル(約280万円)を目標とした寄付ページも立ち上げた。そうした周囲の反響を「予想外」と驚きつつも、また1つ娘と素晴らしい思い出を作った彼は、「今までで最も遅い勝利タイム」でも祝福してくれた多くの参加者や関係者らに感謝の気持ちも綴っている。



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