自然の世界に生きる動物たちには、さまざまな形で身に危険が及ぶ機会も少なくない。1月中旬、英国のある港で生後6週間ほどと見られるオスのアザラシが、悪天候の中トラック駐車場内にいるところを発見されたそう。荒れた海に戻りたくなかったのか、翌日も駐車場に留まり続けていたというアザラシの子に、連絡を受けた動物保護団体が助けに向かった。するとアザラシは、車のダッシュボード上で悠々と横たわっているところを発見され、関係者を驚かせたそうだ。

英紙スコッツマンや英放送局BBCによると、おかしな状態で見つかったアザラシが現れたのは1月17日夕方のこと。英スコットランド地方の街ストランラーにあるフェリーターミナルで、トラック駐車場に1頭のアザラシがいるのを多くの関係者が目撃した。気付いた人の中には、海へ帰してあげようと「彼らなりに最高の努力」で促したものの、当のアザラシは「拒否した」と例えられるほど動こうとしなかったそうだ。

その時期、悪天候が続いていたストランラー付近の海は、強風としけでひどい状況の毎日。何かの拍子に陸へと上がってきたアザラシの子は、せっかく逃れてきた荒れる海を嫌って戻るつもりがなかったようだ。そのまま夜を過ごしたアザラシは、翌日の朝も悪天候の中、駐車場に滞在。そこで、心配したフェリー会社の職員がスコットランド動物虐待防止協会へ連絡し、アザラシの救出を依頼したという。

そして、保護しようと港に到着した協会関係者は、思いもよらない場所にいるアザラシを発見。なぜか車のダッシュボード上に乗って横たわり、外の嵐を見ていた状態でいるアザラシを見つけ、驚いたという。実は、駐車場にいると行き交うトラックでけがをしないかと心配したフェリー会社職員が、アザラシを自分の車のトランクに一旦保護していたそうだ。

するとトランクは居心地が悪かったのか、アザラシは知らぬ間に車内で移動を開始。後部座席を押し下げてトランクから抜け出したアザラシは、車の前部へと身を進ませると、乾いて暖かなダッシュボードの上を見つけ、よじ登って佇んでいたようだ。驚異の行動力で平穏な場所を探し出したアザラシは、頑張り過ぎた結果なのか軽い脱水症状を引き起こしていたそうだが、保護をした協会の看病もあって現在は元気に回復し、海へ帰すトレーニングを続けているという。

一連の行動に「とても賢い（smart）」と感心した様子の協会関係者たちは、アザラシを「スマーティー」と命名。愛情を注がれる毎日を過ごせている様子のアザラシだが、順調ならトレーニングは1か月で終わる見込みで、早く海で逞しく生き抜いていけるよう、成長して欲しいところだ。