世界絶賛の“鮨”映画凱旋初日、山本益博氏が撮影の裏側を語る。

2013/02/03 00:41 Written by Narinari.com編集部

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米国人のデヴィッド・ゲルブ監督がメガホンを執った、“日本の鮨”と“職人”がテーマのドキュメンタリー映画「二郎は鮨の夢を見る」が、2月2日に初日を迎えた。これを記念して、東京・有楽町のヒューマントラストシネマ有楽町では、企画協力の一人でもある料理評論家の山本益博氏が舞台挨拶&トークショーを実施。撮影の裏側をたっぷりと語った。

この日の舞台挨拶は、本作にも出演し、現場をよく知る山本氏が大きな拍手と共に登場。デヴィッド監督との関係を聞かれると「私は監督ではなく、デヴィッドくんと呼んでいまして、彼と出遭ったのは、4年前ですね。私はオペラが大好きでして、そして、彼のお父さんはメトロポリタン・オペラ総師。そういったところを通じて、鮨をテーマに映画を撮りたい人がいると紹介されたんです」と、出会いはもともと“食”とは関係のないところがきっかけだったという。

「最初は、お鮨を撮るにあたってアドバイスが欲しいと言われて、それだったら、『すきやばし次郎』に行ったほうがいい、明日の晩行こうとなったんです。今じゃ映画の影響で直ぐに行くなんてとてもじゃないけれど(笑)。そして、お鮨を食べるや否や、二郎さんを撮りたい!とほかが見えなくなるくらいになって」「デヴィッドくんは、毎日お店や築地に通うようになって、その人柄が気に入られて、お店の皆さんと一緒に賄いを食べるようになって、カタコトでも日本語を覚えて。20代でも、とてもまじめな人柄だから」と、日本最高峰の寿司店であり、ミシュランガイドでは三つ星も獲得した銀座の名店「すきやばし次郎」をテーマに選んだ経緯を説明した。

そうした完成した「二郎は鮨の夢を見る」を、山本氏は「アメリカ人が職人仕事をテーマに、こんなに描けるのかと驚きました。自分のお父さんとの関係を、二郎さんと息子さんとの関係に見たんでしょうね。(偉大な父を超えようとする関係)彼は、親子関係でありながらも、厳格な仕事を息子に伝えようとする姿勢を撮りたかったんでしょうね」と分析。そして「映画を撮ったのは、彼が25歳のとき。まだ若い彼が二郎さんをどう撮るのか気になっていましたが、違和感も無く、よくぞアメリカ人が、日本人のハートを描いた!と感心しました」と絶賛した。

最後に、同店の創業者で、現役寿司職人の小野二郎さん(87歳)について「二郎さんは、87歳になっても毎日600貫は鮨を握っていますよ。映像にもあるのですが、毎日同じ時間に起きて、同じ時間の電車に乗ることを長年続けているんです。最近では朝10時ごろ、店前で外国人の方が二郎さんの入り待ちをしてるんです。日本でも映画が公開されたら、どうなってしまうんだろうと二郎さんと話しました」と二郎さんとのエピソードを披露。会場の観客を大いに楽しませた。

山本氏は1948年東京生まれ。早稲田大学卒業後、落語評論家として仕事をスタートさせ、テレビ「花王名人劇場」のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。料理人とのコラボによるイべントを数多く企画、1985年に東京・有楽町レストラン「アピシウス」でジョエル・ロブションのディナーを企画プロデュースしたことをきっかけに、レストランの催事、食品の商品開発の仕事に参画。2001年には、フランス政府より農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲した。著書に「至福のすし『すきやばし次郎の職人芸術』」(新潮新書)など。


☆イントロダクション

東京・銀座の地下にあるたった10席ほどの鮨店・すきやばし次郎の店主・小野二郎。87歳の今でも職と技に対するこだわりを持つ彼が握る鮨は、「ミシュランガイド東京」で6年連続で最高の三つ星の評価を受け、フランス料理最高シェフのジョエル・ロブションや、ヒュー・ジャックマン、ケイティー・ペリーといったハリウッドセレブなど、世界中の食通たちをうならせてきた。

そんな彼の作り上げていく鮨の味に驚嘆し、職人としての技や生き様に魅了された、アメリカ人監督のデヴィッド・ゲルブ。あのメトロポリタンオペラの総帥、ピーター・ゲルブ氏の息子でもある彼は、来日中に「すきやばし次郎」の鮨と出会い、その芸術性に感動して映画制作を決意。約3か月にわたり東京、静岡と密着取材を敢行した。

日本人の私たちが忘れかけた、二郎の仕事に対する誠実な姿勢。親子であり師弟でもある二人の息子を通じて描かれる、偉大なる父への敬意、そして葛藤……。世界が認める名店を支える者たちのプライドと仕事にかける情熱を、クラシック音楽の旋律とともに美しく浮かび上がらせてゆく。

「二郎は鮨の夢を見る」2月2日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ユーロスペースほか全国順次公開。

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