“抗菌せっけん”などにご用心、アレルギーが発現しやすくなる恐れ。

2012/11/21 17:06 Written by

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米ジョンズホプキンス小児センターのJessica H. Savage氏らは、子供860人を対象にした研究から、せっけんやシャンプー、ハンドクリームといったトイレタリー製品などに使われる抗菌剤や防腐剤へさらされることにより、食物や環境物質に対するアレルギーが発現しやすくなる恐れがあると、米医学誌「Journal of Allergy and Clinical Immunology」(2012; 130: 453-460)に発表した。

◎トリクロサンで食物アレルギー2倍以上に

Savage氏らは、2005〜06年の全米健康調査から抽出した子供860人(6〜18歳)を対象に、トイレタリー製品の多くに使われている抗菌剤や防腐剤の尿中濃度と、アレルギー反応に関連するIgE抗体の血液中の濃度との関係性を検討。IgE抗体濃度が血液1ミリリットル中0.35単位以上の場合を「アレルギー感作あり」とした。

検討の対象となった物質は、これまでの研究で内分泌機能に影響を及ぼすことが明らかにされているビスフェノールA(プラスチックの原料)をはじめ、トイレタリー製品、食品、医薬品に用いられるトリクロサン、ベンゾフェノン3、プロピルパラベン、メチルパラベン、ブチルパラベン、エチルパラベンの7成分。なお、トリクロサンはせっけん、洗口液(マウスウオッシュ)、歯磨き粉などに使われており、パラベンは化粧品や食品、医薬品に含まれている。

検討の結果、トリクロサンの濃度と食物アレルゲンへの感作が、またトリクロサン、プロピルパラベン、ブチルパラベンの濃度と環境アレルゲンへの感作がそれぞれ関連していることが分かった。

各物質の尿中濃度によって3グループに分けて調べたところ、トリクロサン濃度が最も高いグループでは、最も低いグループと比べて食物に対する「アレルギー感作あり」の割合が2.39倍。環境アレルゲンに関してはプロピルパラベンで最も関連が強く、尿中濃度が最も高いグループで2.04倍だった。

Savage氏は「今回の結果は、抗菌剤や防腐剤そのものがアレルギーを引き起こすことを示すものではないが、これらが免疫系の発達に何らかの影響を及ぼしていることを示唆している」と述べている。

◎“衛生仮説”とも一致

Savage氏は、抗菌剤や防腐剤への曝露とアレルギーリスクとの関連について「これらが、体内の善玉菌と悪玉菌の微妙なバランスを崩し、免疫の変調を引き起こしてアレルギーリスクを高めている可能性がある」と説明。さらに「今回の結果は、先進国で食物や環境物質に対するアレルギーが増加している現象を説明する“衛生仮説”とも一致する」と述べている。

この仮説は、幼児期に一般的な病原体と接触することが正常な免疫を得るのに不可欠とするもの。同仮説では、接触がなければ免疫が過剰に反応し、食物タンパク質、花粉、ペットのフケなどの無害な物質にも反応してしまうことが強調されている。

Savage氏らは今後、抗菌剤とアレルギーの発症との関連を解明するため、出生時に抗菌剤の曝露を受けた新生児を対象に、小児期まで追跡する長期研究を実施する予定という。

※この記事(//kenko100.jp/news/2012/11/20/02)は、医学新聞社メディカルトリビューンの健康情報サイト「あなたの健康百科」編集部(//kenko100.jp)が執筆したものです。同編集部の許諾を得て掲載しています。

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