健康診断は死亡率減らさず? 病気の罹患率も受診/非受診に差なく。

2012/10/26 11:07 Written by

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これまで、減塩や抗インフルエンザ薬などに関する数々のメタ解析(過去に行われた複数の研究結果を合わせて解析し、より信頼性の高い結果を導く分析方法)を発表し、時には医学界からの反論も呼び起こしている国際研究グループのコクラングループが、新たな発表を行った。今回は、デンマークのノルディックコクランセンターのLasse T. Krogsboll氏らが、複数の報告に基づく解析から「一般健康診断(general health check、健診)は病気にかかる割合(罹患=りかん=率)や死亡率を減らさない」と結論(「Cochrane Database of Systematic Reviews」10月17日号)。海外の主要メディアも大きく報じている。これに対して専門家は、同誌の付随論評で「ネガティブに受け止めるべきでない」とコメントした。

◎心血管疾患やがんによる死亡リスクも減少せず

現在、健診は幾つかの国でヘルスケアシステムの基盤となっている。しかし、Krogsboll氏らは、健診で一般的に利用されている検査について十分な検証が行われているとは言い難いと指摘。健診に伴う検査や治療の増加は利益だけでなく、損害も増加させる可能性があることから、今回の解析を実施したという。

同氏らは、さまざまなデータベースに報告された健診受診者(健診群)と非受診者(対照群)が対象の研究結果を抽出。最終的に14件(対象18万2,880人)の研究を解析したところ、全ての理由による死亡リスク、心血管疾患(心臓や血管など循環器の病気)による死亡リスク、がんによる死亡リスクは、いずれも健診群と対照群で差がなかった。

ただ、健診群で高血圧や脂質異常症の発生率が増加、自己申告に基づく慢性疾患の増加、6年後に新たな病気と診断される数が健診受診者1人当たりで20%増加などの結果が、それぞれ1つの研究結果から示された。

Krogsboll氏らは、これらの結果から「健診は病気の罹患率や、全ての理由による死亡率、心血管疾患による死亡率の他、がんによる死亡率を減少させなかった」と指摘。再検査の増加や短期間の心理的影響といった要因は十分に検討されていないなどの問題を挙げつつ、大規模研究の解析で心血管疾患やがんによる死亡率の減少が認められなかったことから、「健診の利益はないと思われる」と結論付けている。

◎米国やカナダでは健診推奨せず

米国やカナダの予防医療に関連する委員会は1970年代以降、年1回の健診を推奨しないとの見解を発表している。その代わり、その人の持つ危険因子に応じた病気の検査を一定の間隔で受診することが勧められてきた。しかし、この推奨が守られているかというとそうではなく、米国とカナダで行われた2009年の調査では、医師を受診した理由のトップが「定期健診」との結果も示されている。

カナダ・アルバータ大学のStephanie Thompson氏らは同誌の付随論評で、日本の「メタボ健診」(特定健診・特定保健指導)や、最近、英国が40〜74歳の成人に対する定期健診を開始したことを例示した上で、「Krogsboll氏らが示した重要な結果は、あくまで一般化された項目を多く含む健診に対するもので、決してこの結果をネガティブに受け止めるべきでない」とコメント。

さらに「健診を受けていない人は、診断に必要な検査や治療を医師から勧められていたことが分かっている。おそらく、不要な検査などを減らせたことによる予後の改善効果はあるだろう」との見方を示し、今後、一般的な病気やその危険因子を検出するためのより良い検査方法、さらにその利益と損害、費用対効果の至適化が必要と結んでいる。

※この記事(//kenko100.jp/news/2012/10/25/02)は、医学新聞社メディカルトリビューンの健康情報サイト「あなたの健康百科」編集部(//kenko100.jp)が執筆したものです。同編集部の許諾を得て掲載しています。

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