“妊娠パパ”が妻と別れていた、離婚申請も特殊な問題が立ちはだかる。

2012/08/17 15:45 Written by Narinari.com編集部

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2008年、世界に大きな衝撃を与えた“妊娠パパ”ことトーマス・ビーティーさんをご存じだろうか。女性として生まれたビーティーさんは、大人になって性別適合手術を受け、法律的にも男性と認められた。しかし2003年に結婚した妻が抱えていた体の事情から、自ら人工授精により3人の子どもを出産。以来、家族5人で時々メディアに出演するなど、円満な家庭生活を送っていた――かと思われたが、夫婦は今年4月に別居し、現在は離婚に向けて動いているという。ただ、離婚は簡単ではなく、彼ならではの特殊な問題に直面しているそうだ。

1974年にハワイ州で女性として生まれたビーティーさんは、幼い頃から「男になりたい」との願望を抱き続け、20代を迎えた頃からホルモン注射を開始。体を徐々に男性化させた上で2002年には性別適合手術も行い、その後、法的に“男性”として認められた。

ただ、手術を受ける以前から交際を始め、2003年に結婚した妻のナンシーさんが、前夫との間に2人の子どもをもうけた後、「子宮内膜症により子宮を摘出」(英紙デイリー・メールより)。赤ちゃんを産めない体となっていたことから、彼は出産に必要な器官は残して2人の子どもを産む決意を固めていた。

そして2007年、ビーティーさんは第三者の精子を購入して、人工授精で妊娠。2008年に長女スーザンちゃんを出産すると、2009年には長男オースティンちゃん、2010年にも次男ジェンセンちゃんと、3人の子どもを“男性”として産んだ。スーザンちゃん妊娠の際には、男らしい風貌ながら膨らんだお腹を見せた写真が米メディアによって公開されると、彼は世界初の“妊娠パパ”として注目を集め、たびたびメディアに出演するなど世界に広く知られた存在となった。

しかし自身の人生が公になると世間からの目は厳しくなり、2011年にはそれまで行っていた事業の閉鎖に追い込まれるなど、困難にも直面。「月5,000ドル(約40万円)の借金返済をするため」求職活動を行っている状況も明るみになり、厳しい生活環境は妻との関係にも溝を作り始めたようだ。

ビーティーさんの主張によると、こうした環境下でナンシーさんがアルコール依存に陥り、夜ごと夫に対して暴力を振るうようになったため夫婦関係が悪化。今年4月になって別居に至り、5月には裁判所の判断でビーティーさんへ3人の子に対する一時的な親権が付与された。

そして、5月には妻との離婚申請に踏み切ったというビーティーさんだが、最近になって再び彼ならでは特殊な問題が立ちはだかる。米放送局ABC系列KNXV-TVや米ニュースサイトTMZによると、現在アリゾナ州フェニックスで生活している彼は、地元の州裁判所へ離婚を申請。ところが審査を行うアリゾナ州の裁判官が、「子どもを産む能力がある人を男性と認められる、法的根拠を見つけられない」として、そもそも彼を男性として認め、2人の結婚も承認したハワイ州の決定自体が妥当かに言及し、判断を保留する事態になったという。

アリゾナ州法では同性婚が認められておらず、もしもビーティーさんを“男性”として認めない決定が下されれば、結婚していたこと自体が無効とされ、離婚の認可も下さない見込み。そのため、彼は“男性”として登録された出生登録書やパスポートを提出し、裁判官への弁明を続けているとされている。彼の弁護士の話では、仮に結婚が無効との判断になった場合は、彼が慰謝料を支払う義務も負わなくなるなど有利だというが、ビーティーさん自身は「そんな結果を望んでいない」として、離婚成立を目指す意向を示しているそうだ。

妻との別居後に「最後の性別適合手術」(デイリー・メール紙より)を受け、完全な男性の体になったというビーティーさん。彼は今、男として9年間連れ添った妻との関係に決着をつけるため、問題解決に全力を注いでいる。



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