軽い副流煙でも他者に危険か、非喫煙者で30分後に血管機能障害の兆候。

2012/08/17 07:30 Written by

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喫煙者が吸う煙よりも、多くの有毒化学物質が含まれているというたばこの副流煙。心臓病になるリスクを最大で30%増加させることが知られている。米サンフランシスコ総合病院のPaul F. Frey氏らは、これまでの研究で示されたものよりも濃度が低い副流煙を短時間吸い込むだけで、喫煙をしていない成人に血管機能障害の徴候が観察されることが分かったと、米医学誌「Journal of the American College of Cardiology」(2012; 59: 1908-1913)に発表した。

◎非喫煙者33人が参加

今回の研究には糖尿病、心臓病、腎臓病にかかったことがない健康な非喫煙者33人(18〜40歳)が参加。唾液中のコチニン(ニコチンからできる化学物質)濃度を測り、研究前24時間以内に副流煙にさらされていないことを確認した上で、(1)フィルター処理した清浄な空気、(2)一般的な喫煙者の家庭またはレストランに漂う副流煙、(3)たばこの煙が立ち込めるバーやカジノの副流煙―の3つの環境に割り付けた。

これらの環境は実験室で再現され、たばこはフィルター付きのメンソールでないものを使用。喫煙マシンで煙と測定器を使ってそれぞれの環境に準じた濃度の副流煙を発生させ、被験者を30分間さらした。

その結果、環境中にしばらく漂う副流煙にさらされた成人では、上腕動脈の拡張度が低下し、血管内皮細胞の機能が障害されることが示唆された。血管内皮機能不全は、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こすアテローム性動脈硬化症との関連が指摘されている。一方で、尿検査と血液検査などの代謝物の測定を行ったが、いずれも差は認められなかったという。

◎“別の部屋で短時間”の喫煙でも他者を危険に

Frey氏は「多くの成人と子供が地域社会の屋内外で遭遇している低濃度の副流煙を吸入すると、わずか30分後に血管機能が障害を受けることが示された。これは、非常に懸念すべき問題だ」と述べている。

さらに同氏は「喫煙は、自分で変えられる心臓や血管の病気の最も大きな危険因子。今回の研究で、喫煙習慣が自分の心臓だけでなく、別の部屋で短時間喫煙するだけでも自分以外の人に危険を及ぼすことを喫煙者に強く認識してほしい」と結論。

また、被験者の数が少ないことと副流煙にさらされたのが1回のみだった点が研究の限界だが、その点について「短時間で何度も副流煙にさらされるという日常生活により近い状況が再現されれば、代謝物や心臓と血管の機能に及ぼす影響の規模も大きくなる可能性がある」と述べている。

※この記事(//kenko100.jp/news/2012/08/16/01)は、医学新聞社メディカルトリビューンの健康情報サイト「あなたの健康百科」編集部(//kenko100.jp)が執筆したものです。同編集部の許諾を得て掲載しています。

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