“太ってるだけ”なら早死せず、肥満と寿命の関係が過去10年で変化。

2012/08/15 20:13 Written by

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健康診断の項目の一つに、BMI(肥満指数)というものがある。一般的には、20〜24が適正と言われているが、その数値に科学的根拠はあるのだろうか。米カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部のAnthony Jerant氏らが、米医学誌「The Journal of American Board of Family Medicine」に発表した論文(2012; 25: 422-431)によると、BMIと寿命の間には関係を見いだせなかった。つまり、太っているだけでは必ずしも早死するリスクが上昇するわけではないという。ただし、高血圧や糖尿病にかかっている場合はこの限りではないようなので、安心は禁物だ。一方で、痩せている人の方が死亡リスクが高いこともあらためて検証された。

◎肥満と寿命の関係は過去10年間で変化

BMIは体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った値のことで、この数値が20未満だと低体重、20〜25未満で普通体重、25〜30未満で過体重(小太り)、30〜35未満で肥満、35以上で超肥満と区別される(日本肥満学会の基準では18.5未満で低体重、18.5〜25未満で普通体重、25〜30未満で肥満1度、30〜35未満で肥満2度、35〜40未満で肥満3度、40以上で肥満4度)。

10年ほど前までの研究では、BMIのどの区分が最も短命なのかに関しては諸説あるが、一般的にBMIが標準範囲より大きい、あるいは小さいと、短命になる傾向があるとされてきた。これが、BMIを適正な範囲にすべき理由の根拠だった。

しかし、当時は現代ほど肥満が一般的ではなく、その後の医療の進歩などにより、肥満との関連が深い高血圧や糖尿病による死亡率が低下していることから、現代におけるBMIと平均余命との関連を、高血圧や糖尿病の有無と関連付けて調べることが有効と考えられた。

そこでJerant氏らは、2000〜05年の研究に参加した18〜90歳(参加当時)の男女約5万1,000人分のデータを使って、6年間の追跡調査を実施。人種、居住地、社会的地位、収入、喫煙の有無などは、結果に影響を及ぼさないよう平均化された。6年間の調査期間中に死亡したのは全体の3.1%だった。

◎“肥満なだけ”で死亡リスクが低下

調査の結果、過体重と肥満は、6年間の平均余命に及ぼすリスクが普通体重に比べて高いわけではなかった。超肥満はリスクが1.26倍だったが、糖尿病や高血圧の患者を除くとその差もなくなった。つまり、太っているからといって必ずしも短命というわけではなく、超肥満の場合でも糖尿病や高血圧によることの可能性が高いというわけだ。

また従来の報告通り、糖尿病や高血圧に関係なく、低体重は普通体重の比べて6年間の平均余命に及ぼすリスクが1.8〜1.9倍と高かった。糖尿病や高血圧を持っていない肥満ではリスクが19%減と逆に低く、糖尿病で早死するリスクも過体重や肥満よりも低体重の方が高いという結果になったことから、太り過ぎより痩せ過ぎの方が危険ということが改めて検証されたことになる。

これらの結果を受けて、Jerant氏らは「肥満によって短命になるリスクは,6年間という限られた期間で見た場合、10年前より確実に低くなっている。しかし,これは肥満に対する適切な医療の進歩の結果と見るべきで,依然として多くの生活習慣病が肥満との関連を指摘されていることから、決して肥満を甘く見てはいけない」とコメントしている。

※この記事(//kenko100.jp/news/2012/08/14/01)は、医学新聞社メディカルトリビューンの健康情報サイト「あなたの健康百科」編集部(//kenko100.jp)が執筆したものです。同編集部の許諾を得て掲載しています。

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