娘の成長マネして麻痺が回復、脳梗塞で“閉じ込め症候群”の男性。

2012/08/02 18:14 Written by Narinari.com編集部

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脳梗塞などの疾患が原因で、意識や記憶は完全ながら全身に重度の麻痺が残ってしまい、動くことも話すこともできない状態「閉じこめ症候群(locked-In syndrome)」。この疾患は、映画化もされたフランスの小説「潜水服は蝶の夢を見る」の著者ジャン=ドミニク・ボビー氏の存在で広く知られるようになりました。

この「閉じこめ症候群」と診断された英国の男性が、自分の生まれたばかりの娘の成長と共に、彼女の身振り手振りを真似ることで次第に体の機能を回復。当初は命さえも危ぶまれたという彼は、8か月後には病院から退院することができたそうです。

英紙デイリー・テレグラフや米ニュースサイトのハフィントンポストなどによると、この男性は英中部ダービーシャーに住むマーク・エリスさん。彼は22歳のとき、突然激しい頭痛を訴えました。そして数日後のMRI検査で脳幹部に血栓が詰まったことが原因で脳梗塞を起こしていることが発覚。医師らは妻のエイミーさんに、このままでは心臓への負担が重いため助かる可能性は低く、仮に命に別状がなくとも体に重い障害が残ると伝えました。そして、マークさんはそのまま、体に負担をかけないよう麻酔で眠らされることに。

実はこのとき、エイミーさんは長女のリリー・ローズちゃんを出産したばかり。娘の誕生という喜びの絶頂の直後に、夫を失うかもしれないと知らされ、大変なショックを受けたそうです。

1週間の昏睡の後、目覚めたマークさんの意識はしっかりしていたものの、体で動かせる部分はまぶただけ、という重度の麻痺が残りました。しかし直後からのリハビリで、マークさんは医師らも予想しなかったほどのスピードで回復の兆しを見せ始めたのです。

その助けとなったのが娘のローズちゃんでした。ちょうど赤ちゃん言葉を発するようになった彼女を見たリハビリのセラピストは、マークさんに「彼女の口の動きを真似すれば、赤ちゃんが発音を学ぶのと同じプロセスであなたも言葉を取り戻すことができるかもしれない」と提案。それにマークさんも同意し、練習を重ねたことで、徐々にハッキリとした発音ができるようになりました。そして入院から8か月後には、補助器具を使って歩くこともできるようになり、めでたく退院となったのです。

それから言葉の練習以外でもローズちゃんと遊ぶことで、さらに体の機能は回復。娘のおもちゃで一緒に遊んだり、本を読んだり、iPadを操作したりと、普段の子育てが彼にとってはリハビリになっているそうです。医学的にはいまだに効果的な治療法が見つかっていないという閉じこめ症候群ですが、妻のエイミーさんは、娘の存在と彼女の成長が夫の“回復を望む原動力”になったのではないか、と語っています。

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