音を使って火を消す装置開発、米国防総省機関が新たな消火方法模索。

2012/07/23 13:46 Written by Narinari.com編集部

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米国防総省の研究機関が、軍艦や戦闘機内などの特殊環境下で起きた火災を想定して、2008年より研究してきた新たな消火方法がある。その研究成果である装置が昨年末に完成し、実際に動作する様子を撮影した動画が、先日YouTubeで一般公開された。

新たな消火装置を研究しているのは、さまざまな軍事技術研究を行う「DARPA(国防高等研究計画局)」という米国防総省の機関。DARPAでは過去50年間、時に軍関連施設で発生した火災により甚大な損失を受けながらも、被害を食い止める「新たな消火方法は開発されて来なかった」(DARPA公式サイト)として、2008年に“IFS計画”なるプログラムを始めた。これは「消防活動のアプローチを変える目的」を念頭に、従来にない新たな消火装置を考え出すというものだ。

現在の消火方法は、通常、水や消火剤などを用いて「主に燃焼に関わる化学反応を起こさせない」ようにして鎮火させるのが一般的。DARPAでは火を異なる観点から見つめ直し、新しい消火方法の確立を目指した。そこで利用できそうだと考えたのが音。研究者たちは火を制御するための基礎科学を調べ上げ、3年近くの時間をかけて、2011年12月に新たな消火装置を完成させたという。

その1つが、7月12日付で公開された「DARPA Demos Acoustic Suppression of Flame」(//www.youtube.com/watch?v=DanOeC2EpeA)という動画に映る装置。炎を上げるプレートの両側に置かれたスピーカーがそれで、DARPAの説明によると、発生させる音波が近辺の空気を飛ばして気圧を下げ、燃焼の継続を弱める働きがあるという。また音波は炎の発生面にも燃料の早い蒸発を促す影響を与え、噴き上がる炎の面積が一時的に広がるものの全体の温度が下がり、最終的には自然に「燃焼が止まる」ようになるそうだ。

動画の実験に使われた小さな火の発生源なら、消火までにかかる時間はわずか10秒。残念ながら現段階では実用化の目途は立っていないが、計画の責任者を務めたマシュー・グッドマン氏は、「今回の結果は、燃焼に関する研究において新たな考えやアプリケーション開発に刺激を与えるはず」と意義を強調している。

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