人命救助のライフセーバー解雇、「担当区域離れた」との理由に批判も。

2012/07/09 09:19 Written by Narinari.com編集部

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米国で先日、人命救助した21歳のライフセーバーがその行動を理由に会社から解雇を言い渡された一件があり、大きな話題となっている。フロリダ州のビーチで仕事をしていた彼は、目撃者の通報を受けてすぐに溺れた男性のもとへ急行。しかし男性が溺れていた場所は市から請け負っている監視エリアの外だったため、会社から「持ち場を離れた」としてクビを言い渡されたそうだ。

米紙サウスフロリダ・サン・センチネルやシアトル・タイムズなどによると、話題の人になっているのは、フロリダ州のハランデールビーチで仕事をしていたトーマス・ロペスさん。同州オーランドのライフセーバー派遣会社に入り、4か月前から働いていたというロペスさんは7月2日午後1時45分ごろ、辺りの監視を行っていたところ海水浴客から「溺れている男性がいる」との通報を受け、すぐに現場へ向かった。

男性が溺れたのは、彼がいた場所から1,500フィート(約450メートル)南に離れたエリア。そこは彼の会社が請け負っていた監視担当区域から外れた場所で、もともと監視員の目が行き届かない区域として「自己責任で泳ぐよう」警告する看板も立てられていた。つまり、男性が危機的状況に陥ったのは自業自得とも言えるわけだが、助けを求める人に「ノーとは言えない」と話した彼は、当然の行動といわんばかりに救出へ。幸い彼が到着したときにはほかの海水浴客によって助け出されていた男性は、ロペスさんと非番でビーチに居合わせた看護師の応急処置を受けた後に病院へ搬送され、一時は集中治療室に入ったものの、現在は無事に退院したそうだ。

事故はこれで一件落着となったが、ロペスさん自身は自分の取った救出行動が、仕事上問題があることは自覚していた。会社に戻った彼は、上司の指示に従い事故対応の報告書を作成。そして報告書を読んだ上司は、申し訳なさそうな態度ながらも「規則は規則だから」と言って、彼に解雇を通告した。彼の行動にあった問題は、市と会社が結ぶ契約に違反して、一時でも監視担当地域を離れた点。もしも今回のように担当区域外で事故が起きた場合、ライフセーバーは「持ち場を離れずに救急車を呼ぶ」(米ニュースサイトMSNBCより)のが、会社が示す正解の行動と決められていた。

事故当時会社の方針は理解していたというものの、通報を受けて「じっとしていられなかった」と話すロペスさん。そのため、自分が取った行動が解雇に繋がるのも「覚悟はしていた」そうだ。実際、最悪の可能性が現実となった彼は「モラルに従って仕事をしたので、それほど驚きもなかった」と解雇を冷静に受け止めているものの、自分のモラルを受け入れない会社側の対応には「もうそんな会社で働きたくない」とピシャリ。社内には同じ気持ちの人は少なからずいたようで、ロペスさんの解雇に抗議して、数人が会社を辞めたという。

今回の会社側の事故対応は、忠実に市との契約を全うしようとした結果だったが、米国民からは厳しい視線が注がれているようだ。地元住民からも強い反発や批判の声が上がっているほか、2003年から契約を結んでいるハランデール市の市長も話を聞いて「愕然とした」と語り、「長い間仕事をしてもらったが、間違いだったと思わざるを得ない」と、今年で切れる契約を更新しない考えも示唆している。

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