“禁句”と同名の村に迫る決断、迷惑行為続き村名変更の住民投票へ。

2012/04/20 08:30 Written by Narinari.com編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加


日本人にとってのエロマンガ島(バヌアツ)やキンタマーニ(インドネシア)のように、聞く人によっては面白いとして注目される世界の“珍”地名。それが、有名になって観光地化するなど地元のメリットになれば素晴らしいのだが、中には心ない人によって実害を被っている場所もある。英語の“禁句”と同じとして有名なオーストリアのある村では、迷惑行為の数々に一部村民が業を煮やし、村名変更の是非を問う住民投票を実施する運びとなったそうだ。

この村は、オーストリア北西部にあるフッキング村。英紙デイリー・テレグラフによると、村が注目を集めるようになったのは、第二次世界大戦が終わった直後からだという。村がある地域周辺に駐留した米軍の兵士が、フッキング村の存在を知って広めたことから、英語圏の人々を中心に珍名として注目されるようになった。フッキング村のつづりは「Fucking」。英語圏では、放送禁止用語とされる言葉そのものが地名となっている。

以来、村には名前を面白がる多くの人たちが観光で訪れるようになったが、必ずしも喜ばしい観光客ばかりではないという。例えば250ポンド(約3万3,000円)かけて作られる村名を記した標識は、これまでに13個が盗まれて姿を消した。ほかにも標識の前で半裸になって写真撮影する女性観光客も現れ、村民はそうした光景に出くわすたびに「不快な思い」をしてきたそうだ。

さらに最近では、インターネットの電話帳を見て村民に直接いたずら電話をかけるという不届き者が急増。これには、2010年にメディアの取材を受けた当時の村長が「英語を話す人たちが、どうしてそんなことを続けるのか理解できない」と話し、村民の苦痛を代弁している。ただし村長はこのとき、名前の変更を促す「どんな提案も拒否する」とも語っており、フッキング村の名前はそのまま残って行くかと思われた。

しかしついに、一部村民が不当な迷惑行為の数々に我慢の限界を感じたようだ。村では4月下旬にも104人の全住民に対し、村名の変更を問う住民投票を実施する運びに。住民の選択肢は、このまま「Fucking」村として名前を残すか、16世紀まで使用されていた「Fugging」のつづりに直すかの2つ。実は村では1996年にも同様の住民投票を実施したそうで、このときは「存続と決まった」(英紙サンより)経緯もある。つまり英語圏ではない、現地の住民たちにとっては今の名前が心に根付いた立派な名前と思いながらも、不快な出来事が続く状況が、その考えを揺るがせる事態にまで陥っているというわけだ。

フッキング村のフランツ・メインドル村長は、いたずら電話の急増が住民投票を決断させた原因と説明。「ずっと同じ名前でいたかったけど、最近はひど過ぎる」と話し、心ない人たちの行動から村民を守る対応に迫られた格好だ。ただし村名変更に至るには「全員の同意が必要」で、いたずら被害に対する認識と村名に対する思い、それぞれの住民がどちらを取るかで判断を迫られる。村民は今、苦しい思いでじっくり熟慮しているはずだが、願わくば名前を変えずともいたずら行為が減り、村に平穏な日々が戻って欲しいものだ。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.