「死ぬこと」を条例で禁じた村、施行から1週間で住民2人が“違反”。

2012/03/15 05:02 Written by Narinari.com編集部

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イタリアのある村で3月から、風変わりな条例が施行され話題を呼んでいる。それは、住民に「死ぬな」という条例。ずっとそこで生活していれば、誰もがいつかは違反してしまう条例を制定した背景には、この村が抱えている特別な事情があるそうだ。

伊紙ラ・スタンパやカナダ放送局CBCによると、この条例が施行されたのはイタリア・ナポリの北西約50キロに位置する、人口3,700人の村ファルチャーノ・デル・マッシコ。ここでは3月5日から、村長の発案により住民に死を禁じる条例が施行された。とはいえ、どんな人でも寿命は必ず訪れるもの。施行からわずか1週間の間にも残念ながら2人の住民がこの世を去り、早速条例の違反者が現れてしまったという。

もちろん、亡くなってしまっては違反しても罰しようがなく、この条例は村長が冗談半分で考えたアイデア。ならば、なぜこのような条例を施行したのかは気になるところだが、それは村に墓地がないことが大きな理由のひとつだった。村では従来、家族が亡くなった場合には近郊の街カリーノラにある墓地に埋葬するのが通例だったのだが、村としてはそれを好ましく思っていなかったという。

カリーノラとファルチャーノ・デル・マッシコの2つの自治体は、1960年代から墓地を巡って諍いが絶えなかったそう。そのため、墓地を所有していたカリーノラ側は、長年にわたりファルチャーノ・デル・マッシコ側の住民の埋葬を「しぶしぶ認めていた」(イタリア紙イル・メッサジェロより)状況だった。さらに1990年代には、近隣の自治体同士が火葬場や礼拝堂を備えた大型の墓地を共同で建設するという協定を結びながらも、計画遂行の過程で置き去りにされたとして、ファルチャーノ・デル・マッシコ側が脱退する事態も発生。こうした歴史的背景から、2つの自治体は墓地に絡んで良好とは言えない関係に陥ったようだ。

しかしながら村はすぐ独自に墓地開発をする余裕もなく、かといってカリーノラの墓地に住民が頼って欲しくない――。そうした状況の中で村長が打ち出したのが今回の条例だったというわけだ。

条例は住民を罰することを目的としているのではなく、村が抱える問題を浮き彫りにするために制定された形。実際、条例の施行後には、村に土地の提供を申し出る住民も何人か現れたそうで、事態は良い方向へと向かい始めているようだ。

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