85歳トニー・ベネットが快挙、史上最高齢でのグラミー3部門受賞。

2012/02/13 18:49 Written by Narinari.com編集部

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昨年10月、史上最高齢で全米チャート1位を獲得した85歳のトニー・ベネットが、日本時間2月13日(月)朝に米ロサンゼルスの「ザ・ステイプルズ・センター」で行なわれた第54回グラミー賞受賞式で、また大きな記録を樹立した。トニーは今回ノミネートされていた3部門すべてを受賞し、史上最高齢での3部門受賞。これまでの15回の受賞と合わせ、計18回の受賞となる。  

トニー、そして「デュエッツII」の受賞内容は次の通り。

・最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス](「ボディ・アンド・ソウル」 with エイミー・ワインハウス)
・最優秀トラディショナル・ポップ・ヴォーカル・アルバム
・最優秀インストゥルメンタル・アレンジメント (「フー・キャン・アイ・ターン・トゥ」 with クイーン・ラティファ)

受賞式では、キャリー・アンダーウッドと「デュエッツII」に収録されている「イット・ハッド・トゥ・ビー・ユー」のパフォーマンスを披露。これもまた、グラミー史上最高齢のデュエット・パフォーマンスとなった。

85歳のトニー・ベネットがこうして活躍する一方、あまりにも若すぎるアーティストの死が悔やまれている。2月11日に亡くなったホイットニー・ヒューストンや、先月亡くなったエタ・ジェイムズ、そして昨夏亡くなったエイミー・ワインハウス。才能溢れる女性アーティストが若くして立て続けて亡くなっているが、「デュエッツII」にはエイミーの最後のスタジオ・レコーディングとなったデュエット曲「ボディ・アンド・ソウル」が収録され、この楽曲が今回のグラミー賞で最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンスを受賞した。

受賞スピーチではトニーと共に、エイミーの両親が壇上に。父親のミッチ氏は「今このステージにいるべきなのは私たちではなく、娘のエイミー。運命は皮肉なカードを配るものです」「トニーとのデュエットは彼女に大きな意味を持っていました。(受賞した)『ボディ・アンド・ソウル』は彼女が一番好きな曲でした」とエイミーの思い出を振り返り「ホイットニー・ヒューストン、エイミー・ワインハウス、エタ・ジェイムズよ皆永遠に。天国に美しいガールズ・バンドが出来た…」と締めくくった。トニーは終始夫婦のそばに優しく寄り添い、最後は抱擁を交わすシーンも。

今年のグラミー賞の主役となったのは6部門受賞のアデル、5部門受賞のフー・ファイターズ、そして史上最高齢での3部門受賞となったトニー・ベネットだ。

フー・ファイターズとトニー・ベネットの作品には共通点がある。フー・ファイターズの「ウェイスティング・ライト」はヴォーカルのデイヴ・グロールの自宅ガレージでテープレコーダーを用いて制作された、トレンドとは逆行した極めてアナログな作品。トニー・ベネットの「デュエッツII」もまた、特別なレコーディング方法がとられた作品である。

「デュエッツII」において、トニーのデュエット相手はレディー・ガガを始めとした豪華アーティスト陣。このような場合、通常は予算面や効率面を重視してアーティスト同士が一緒にレコーディングを行わず、それぞれ別々の場所でフレーズごとに録音し、データだけを交換してデュエットを成立させるところだろう。しかし、同作ではトニーが世界各地を飛び回り、それぞれの共演相手と一緒にスタジオに入りレコーディングを行っている。

しかも、これらのレコーディングは共演相手との別録りではなく、隣同士でそれぞれマイクに向かうライヴ・レコーディングという形が取られた。これにより、編集による修正が効きにくくなった半面、臨場感やアーティスト同士の化学反応を収録することに成功。この「スタジオで起きる奇跡」は3月21日に発売されるDVD「デュエッツII:グレイト・パフォーマンス」で映像としても楽しむことができる。デジタル化が進む音楽制作の現場で、あえて時代と逆行し、手間のかかる制作方法がとられた作品たちが今回のグラミー賞で評価される形となったのだ。

85歳になっても最前線で活躍し、グラミー3部門を受賞したトニー・ベネット。そして若すぎる死を迎えたホイットニー、エイミー、エタ・ジェイムズ。めでたさと悲しさが互いを照らしあうような、記憶に残るグラミー賞となった。

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