ビルを改築した“屋上小学校”、中国の出稼ぎ労働者の子女が勉学に励む。

2011/12/06 03:26 Written by Narinari.com編集部

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先日、中国のメディアで報じられ、多くの人々の関心を集めた小学校がある。“屋上小学校”と名付けられたこの学校。校庭や体育館はなく、狭い屋上がその代わりを担っていることからそう呼ばれているという。

中国紙羊城晩報などによると、この小学校は湖北省武漢市の江漢区復興5村華安里社区にある凌智小学校。農村からの出稼ぎ労働者の子女が通う、民工小学校のひとつだ。中国の大都市には必ずと言って良いほどこの民工小学校があり、公立小学校よりも格段に悪い教育環境のもと、子どもたちが日々勉学に励んでいる。

同校の校舎は住宅街に建つ1棟の4階建てビルで、周りには同様の建物がひしめき合い、一見するだけでは小学校と判別するのは難しい。入り口の扉や玄関も、学校だからといって広々としているわけではなく、周囲の建物と同様に狭い作りだ。

その“校舎”に入ると、教室や子どもたちが寝泊まりする寮、食事部屋、レクリエーション室などがあるが、それらは便宜上分けられているだけで、実際はすべて住宅用の部屋を改造した簡易なものだ。すべてのスペースを合わせても800平方メートル程度しかなく、そこで375人の子どもが学んでいる。

この学校には校庭や体育館がないため、運動時や全生徒が集まる集会時には屋上を利用しているが、それも全生徒が集まるとはみ出してしまうほど狭い。かつて近所にあった別の民工小学校が閉校したことに伴い、97人の生徒が転入してきたため、同校はさらに混み合うようになったのだという。

中国にある民工小学校はその運営形態や規模はさまざまだが、凌智小学校のような過酷な条件下にある学校が一般的だ。徐々にその環境は改善されていると言われているものの、経済発展を続ける大都市にはいまだ多くの出稼ぎ労働者の労働力が不可欠であり、彼らや、彼らの子どもたちまで保障制度が行き届かないという現状がある。今回、中国メディアによって同校の実情が報じられたのも、大学とメディアが手を組んだ民工小学校および貧困地区学校の環境改善活動が契機となっており、より多くの人々の関心を集めて少しでも多くの支援を得る狙いがあるようだ。

現在、凌智小学校の改築工事プロジェクトは着実に進んでいるそうで、デザインを担当している穆威さんによると、工事には30万〜35万元(約360万〜420万円)程度の資金が必要とのこと。凌智小学校の校長の話では、以前、教師たちが自腹で校舎を改築しようとしたこともあったそうだが、そのときは資金が足りずに、結局あきらめてしまったという。今回は無事に工事が進み、子どもたちを取り巻く環境が少しでも改善されることを期待したい。

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