“退屈な話”集めた会議が盛況、主催者の思いと裏腹に“面白い”危機。

2011/11/23 06:17 Written by Narinari.com編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加


一般的に討論会やトークショーで多くの人を集めるには、世間のニーズに応じたタイムリーな話題を提供できるかどうかが重要なポイント。それを知りたいと思う人が多ければ、自ずと会場には人が詰めかけるはずだ。ところが先日、英国では主催者が「気まずい時間を約束する」と豪語する妙な会議イベント、その名も「Boring(退屈) 2011」なるものが開催された。日常ではあまり人々が関心を示さないような話題について、専門家たちが話をするというこのイベント。しかし主催者の思いとは裏腹に、チケットはすべて売り切れるほど盛況だったそうだ。

このイベントを企画したのは、DVD販売会社でアルバイトをしている30歳のジェームズ・ワードさん。もともとブログ「I Like Boring Things(私は退屈なことが好き)」を運営しているワードさんは昨年、「冗談半分で」(英紙サンより)今回のイベントの前身となる小さな集会を始めた。最近の世の中は大きな話題になりそうな物事がメディアや広告で派手に露出し「騒がしい」と話す彼は、日頃から“人々の関心を集めない”物事に着目。話し合う場を作ろうとこのイベントを仕掛けという。

そうした趣旨だけに、招かれる専門家たちが用意するテーマも、多種多様で掴みどころがない。例えばある専門家は「世界に革命を起こした三菱電機製のハンドドライヤーについて」を、別の専門家は「2の平方根が分数として表せないという証明」についてトーク。このほかにも「映画に使われたロケーションについてのディスカッション」や、ワードさん自身が「ある雑誌の創刊から10年の流れを考察」する話などが次々と登場する。

ワードさんは、このイベントを開くのは「些細な物事を知る喜び」の発見にあると力説。メディアやインターネットから情報が溢れる現代、もし得る物が乏しければ「自分の頭で何か考えるであろう」退屈な状況こそが大切と、ワードさんは考えているそうだ。ただ、一方でそんな考えが多くの人々に受け入れられるとも彼は考えてないようで、11月19日の本番前には訪れる聴衆たちに「気まずい時間を約束する」と、妙な宣言もしていた。

そして迎えた当日。ロンドンの会場に用意された400席分のチケットは、当日券で15ポンド(約1,800円)するにも関わらず完売となり、ワードさんも予想以上の盛況ぶりに「信じられない」(サン紙より)と話したそう。また、“退屈”を求めてやって来た聴衆たちは、「いびきを掻く状態には程遠く」それぞれの話を興味深く聞いていたとも。

彼の考える“退屈”の良さを、実は多くの人も求めていると実感したワードさんは、来年は「ドイツのベルリンで開く計画」(英紙インディペンデントより)を明かし、イベントの海外進出を視野に入れ始めているという。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.