偶然見かけたのは“本当の親”、30年以上経って病院の取り違え気付く。

2011/11/21 14:46 Written by Narinari.com編集部

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我が子の誕生は、どの親にとっても喜びの瞬間。特に初対面の瞬間は、誰もが自分と似ている部分を見つけては繋がりを感じ、嬉しさを噛みしめることだろう。しかし、そんな思い出が何十年も経って勘違いだとわかったら――。アルゼンチンでいま、そんな現実に直面した2組の家族が話題を呼んでいる。37年前、同じ日に生まれた2人の男性は、生まれた病院の看護師のミスにより、違う家族に育てられる運命を辿った。それが明らかになったのは“本当の親”と出会った子どもの直感がきっかけだったという。

アルゼンチン紙クラリンやベネズエラ紙ラテンアメリカ・ヘラルドトリビューンなどによると、この2人はブエノスアイレス近郊の街アスルで暮らす、共に現在37歳のグスタボ・ジェルマンさんとハピエル・デルマッソさん。2人は1974年9月の同じ日にアスルの病院で生まれた。そして同じ新生児室に入れられた2人は、生まれた翌日に看護師の間違いで、本当の両親と引き離されてしまうこととなる。

誕生から一夜が明け、ハピエルさんの実母は「子どものために用意した服をまだ着させていない」(ラテンアメリカ・ヘラルドトリビューン紙より)と看護師に注文。看護師は即座にハピエルさんに服を着せる対応をしたが、ここで手違いが生じ、隣の病室にいた別の家族が用意したもの――グスタボさんの親が用意したものを着せてしまった。そして、グスタボさんにはハピエルさんの服が着せられ、これで2人の両親はどちらも自分の子ではない赤ちゃんを「決して何も疑わず」に我が子と認識してしまったという。

結局誰もこの間違いに気が付かず、別の親によって育てられた2人だったが、最初に血縁関係を疑ったのはハピエルさんだった。きっかけは15年前に彼の姉妹が輸血を必要としたとき、家族との血液型の関係がおかしいと気付いたこと。その時から「疑い始めた」というハピエルさんだったが、その謎は解き明かされぬままさらに月日は流れて2007年7月、疑念が確信に変わる決定的な出来事に遭遇した。

ある日、近所の公園にやって来たハピエルさんは、そこで見かけた家族に目を奪われる。彼が見たのは、グスタボさん兄弟と父親の姿。お互いの家が近所だった事情もあり、それまで顔は知っていても「付き合いが無かった」(英紙デイリー・テレグラフ紙より)ため、お互いの家族までは知らなかったようだ。このときついに偶然の出会いを果たしたハピエルさんは、グスタボさんを除く兄弟や父親の姿に、自分との「身体的な類似点を見つけ驚いた」そう。過去の疑いもあったハピエルさんは、グスタボさん一家に彼が生まれたときの話を聞き、生まれた日や病院も同じと分かると、一緒にDNA鑑定を受けるようお願いをした。

この申し出に「問題に巻き込まれたくない」と思ったグスタボさんは当初難色を示したものの、ハピエルさんの説得に最終的には「折れた」という。そして2009年、鑑定で明らかになったのは、2人がそれぞれもう一方の家族とDNAが「99.9%一致する」とした結果。この事実が分かった当事者2人は、揃って激しい衝撃を受けたそうだ。また、ハピエルさんの育ての親にしてグスタボさんの実母となる、マルタ・デルマッソさんは「この現実を受け止めるのはとても難しい。夫もずっと泣いていた」と明かし、両家族にとってもあまりにも残酷な事実に放心状態となったようだ。

この結果を受けて、2人が生まれた病院は原因を究明するための調査を開始。しかし、現時点では「この件に関係した看護師を見つけられていない」という。ただ、時間の経過と共に現実を受け止められるようになってきた両家族は、今ではランチやディナーを一緒に楽しむようになり、良い関係を築いているそうだ。まだ戸惑いが消えないというグスタボさんも、最近は「私には2人の父親と2人の母親がいる」(アルゼンチンラジオ局CADENA3より)と前向きに捉えていることを明かしている。

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