ネットで“菌”取引する親たち、水疱瘡菌付きキャンディーなどに懸念。

2011/11/10 08:26 Written by Narinari.com編集部

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米国でいま、SNSを通じて広がってきたある活動に、医療関係者などから懸念の声が挙っています。それは水疱瘡(みずぼうそう)などの病気に、子どもたちをわざと感染させたいと願う親たちが行っている活動。米ニュースサイトのハフィントンポストなどによると、オンラインのコミュニティで、水疱瘡にかかった患者が口に含んだキャンディーや、身に付けた衣類を取引しているというのです。

なぜ、親たちが子どもにわざわざ病原菌を与えるのか。これは欧米を中心に、幼児への予防接種を躊躇する人が多いという背景があります。今から十数年前、予防接種が幼児に自閉症の症状を引き起こす可能性がある、との研究論文が発表されました。この説はメディアでも大きく取り上げられ、その後ワクチンに添加されているチメロサールという物質が問題視されたこともあり、予防接種に対する恐怖心は社会現象となったのです。

その後、予防接種と自閉症の関連性にはさまざまな研究がなされ、米政府の疾病予防管理センター(CDC)が関連性を否定する見解を発表。ただ、いくら安全性を強調しても、まだまだ自分の子どもへの予防接種を拒否する親が少なくないのが実情です。

そこで親たちは、予防接種以外の方法で病気に対する抗体を付けさせるために、幼い子どもたちをわざと水疱瘡などの病気に感染させる方法を選択するようになりました。小さいときなら症状も軽く済むから、とった考えも手伝い、知り合いに水疱瘡を発症した子どもがいると知ると、わざと病気をうつしてもらう目的で自分の子どもをその家に連れて行ったりするのです。これを「チキンポックス(水疱瘡)パーティ」と呼びますが、ここまでは日本でも目にした、実際に体験したという人もいるかもしれません。

米国で問題となっているのは、そうした背景から、ネットでも「チキンポックス・パーティ」を募るグループやコミュニティが誕生していること。それが次第に「パーティにいちいち足を運ばなくても、菌を郵送し合えば良いのでは?」とのアイデアに繋がったようで、こうした親たちの集まるページでは、「子どもが水疱瘡になりました。彼の舐めたキャンディ、使ったタオルなど差し上げます」といった書き込みがされているのです。

しかし、水疱瘡菌は強い感染力を持っています。体外で生存する期間は短いとはいえ、郵送すれば第三者が接触感染する可能性も否定できません。もちろん病原体を郵送すること自体が米国では違法です。さらに、唾液などの体液を見ず知らずの個人から譲り受け、それを子どもに与える行為は、水疱瘡よりももっと重い疾患、たとえばB型肝炎や劇症型レンサ球菌感染症に感染してしまうことも有り得ます。こうした利益よりも危険性のほうが高いとして、医療関係者の間では特に懸念の声が広がっているというわけです。

しかし、水疱瘡以外にも、ネットでは麻疹(はしか)やおたふくなどの病原菌の“取引”を求める親の書き込みも現れており、この活動はさらに広がっていく可能性を見せています。

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