勘違いで芸術品を磨き大損害、清掃員の熱心さが仇となり原状回復不能に。

2011/11/07 15:06 Written by Narinari.com編集部

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芸術作品には細かな部分まで作者の意図が込められている場合があり、それを詳しく知るためには知識と情報が必要だ。しかし、興味のない人にはさっぱり意図も価値も分からないのが、芸術の難しいところ。ドイツの博物館で働いていた清掃員の女性は、仕事熱心さが仇となり、そうした作品の価値を落とす大失態を犯してしまったという。

この一件が明らかになったのは、ドイツ・ドルトムントにあるオストヴァル博物館。英スカイニュースや英放送局BBCなどによると、先日この博物館で働く女性清掃員が、展示されている作品に汚れが付いていると思い、クリーナーを使って「輝くほど」磨きあげたという。与えられた仕事を熱心にやり遂げたかと思いきや、清掃員のこの行動により、博物館側は「80万ユーロ(約8,600万円)」もの損害を被ってしまった。

問題の作品は、1997年に亡くなったドルトムント出身の芸術家マルティン・キッペンベルガー氏が制作した作品。「When it Starts Dripping from the Ceiling(天井から滴り始めた時)」と題された作品は、何本もの細い木で組まれた塔の下にゴムの受け皿が置かれ、中には水が渇いた後のような模様が意図的に付けられていた。ところがそれを見た清掃員は、模様を“汚れ”と勘違いしてしまい、これをきれいに拭き取ってしまったのだ。

ドルトムント市のスポークスマンによると、この作品は個人コレクターから借り受けて展示しているもので、その価値は保険業者の評価で80万ユーロにも上る。スポークスマンは作品の原状回復を「現時点で不可能」と話しているものの、修繕に入るかどうかは「コレクター次第」(英放送局BBCより)とし、意向を確認中のようだ。ただ、修繕するにしてもどのように行えば良いのか、「(すでに他界しているので)キッペンベルガー氏に相談もできない」と頭を抱えている。

一方、女性清掃員を昨年10月から雇った会社は市の調査に対し、仕事をする際は「少なくとも作品から20センチは離れるよう」指示していたと説明。ただし、清掃員にその説明がしっかり行われていたかどうかは、今のところよくわからないという。

忠実に仕事をこなしたはずが大きな損害をもたらしてしまい、さぞかし女性清掃員もショックなはず。しかし、会社が説明をしたかしないかに関わらず、清掃員も博物館に展示されている作品の価値というものを、もう少し理解する必要はあったのかもしれない。

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