「スーパーバス」初の実用化へ、スポーツカー型23人乗りバスがUAEを走る。

2011/10/06 05:01 Written by Narinari.com編集部

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一般的にバスと言えば、路線バスのような大型バスや、送迎などに使われるマイクロバスを思い浮かべる人が多いだろう。いずれも多くの人数を乗車させるため大きな箱型の作りになっているが、オランダでは2004年から、従来のバスの概念を覆す快適でスピーディーなスポーツカーのような「スーパーバス」の開発が進められてきた。この「スーパーバス」は昨年ドイツで開かれたモーターショーで初めてお披露目され、世界の注目を集めたのだが、このたびUAEの富豪が名乗りを挙げ、初の実用化に向けて大きな動きが出てきたようだ。

「スーパーバス」はオランダ人初の宇宙飛行士にして、現在デルフト工科大学で物理学を研究するウッボ・オッケルス教授が中心となって2004年に開発が始まった。この構想にはオランダ政府のほか、オランダや英国の企業、大学などもスポンサーとして参加し、これまで開発に注ぎ込まれた金額は実に「700万ポンド(約8億円)」(英紙デイリー・メールより)にも及ぶ。「いつでもどこでも乗りたい場所から乗って、乗り換えなしに目的地へ連れて行く」(プロジェクト公式サイトより)をコンセプトに、6年かけてようやく完成したのが昨年公開された1号機だ。

その外観は前から見ると車高が低く、カッコいいスポーツカー。しかし、全長15メートルある車体はリムジンのように長く、8つのウイングタイプのドアを開けると、車内には23人もの人が乗車できる。空気力学を専門としていた元F1ウィリアムズチームデザイナー、アントニア・テルツィ氏も関わったこの車は電気駆動で、性能は最高時速250キロ、航続距離210キロという文字通りの「スーパーバス」だ。さらに、衝突防止用レーダーも搭載され、250キロからの制動距離を200メートルに抑えるブレーキ性能の強化などにより、高速運転しながらも安全面が確保されるよう最大限の配慮がなされている。

昨年の初お披露目の際には、将来的に「スーパーバス」専用レーンの建設も視野に入れ、オランダ国内で2015年の実用化を目指すとの構想も明かされていたのだが、今年に入り異なる方面から進展があったようだ。

それは、4月にUAE(アラブ首長国連邦)で開かれた展示会がきっかけ。公式サイトによると、UAEの有力者やFIA(国際自動車連盟)の関係者を集めて、F1レースも開かれるサーキット「ドバイ・オートドローム」で展示会が行われ、車の性能や環境面などで大きな注目を集めたという。その結果、「初めての商業的関心」(デイリー・メール紙より)がUAEの有力者から伝えられ、初の実用化に向けて大きく前進したそうだ。

デイリー・メール紙によると、この有力者は「スーパーバス」を購入後、アブダビやドバイに到着した客人を輸送する交通手段として活用する意向だという。ただ、現在利用されている一般道を走るため、走行時は「通常の速度」に抑えられるとも。それでも「スーパーバス」に対する地元の期待は大きく、アブダビの警察署長は「交通渋滞を減らすだけでなく、大気汚染も減少させる」と実用化を心待ちにしているようだ。現在のところ、具体的な導入日時までは伝わっていないが、近々UAEの街を走り始める「スーパーバス」は、新たな中東パワーの象徴となるかもしれない。

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