“9年間ガム取り”が大きな輪に、バス運転手の孤独な活動が変化起こす。

2011/07/03 00:16 Written by Narinari.com編集部

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中国浙江省寧波市でバスの運転手をしている46歳の王忠良さんが先日、中国メディアから大きな注目を集めた。まじめに仕事に勤しむ“普通のおじさん”である王さんが注目された理由は、市民のために9年以上も一人でガム取りの作業を続けているから。これまでに処理したガムは、合計で600キロにも達するという。

中国紙現代金報によると、王さんがガム取りを始めたのは、バス会社「寧波公交総公司」に入社したばかりの2002年はじめ頃のこと。入社当時、王さんは518番バスの運転手として勤務していたのだが、ある日、乗客のひとりが靴にこびりついていたガムを必死になって落としている姿を目撃した。その乗客は下車する際、王さんに向かって「どうしてバスにこんなにガムが落ちているのか!」と不満をぶつけたことが、彼の意識を大きく変えるきっかけになったのだという。

日本ではバスの中にガムが落ちていること自体が珍しい光景だが、中国では事情が異なるようで、王さんはその乗客に文句を言われるまで、バスの床にこびりついているガムを特に意識していなかったそう。「ガムはバスにあって当たり前」。そんな風に考えていた王さんにとって、乗客の言葉は深く心に響いたのだ。以来、王さんは自分でガム取りヘラを用意し、自分が運転するバスにこびりついているガムを削り取る作業を、黙々と始めたという。

王さんは毎日の仕事を終えると、ガム取りヘラを持って作業を始める。「ひとつのガムを削り取るのに10〜20分ぐらいの時間を要します」と王さんが言うように、その作業は見た目よりもずっと大変だ。それでも王さんは“こびりついて長い時間が過ぎたガム用”、“比較的新しいガム用”の2本のヘラを使う独自のガム取り方法を編み出し、今では当初とは比較にならないほどスムーズに作業を進められるようになった。

彼がガム取りを始めてすでに9年余りの月日が経つが、徐々に好ましい変化も現れてきている。毎日ガム取りをするために誰よりも早く出社し、誰よりも遅く退社している王さんの地道な努力を知った同僚たちが協力するようになっただけでなく、今年社内で募った“ガム取り清掃隊員”には120名もの志願者が現れた。また、王さんの活動は乗客にも好影響を与えているそうで、以前よりも明らかにガムを吐き捨てる乗客が少なくなっているそうだ。

寧波公交総公司の話では、これまでの活動で処理されたガムは合計600キロに達するとのこと。ガムは1つが1グラムにも満たないことを考えれば、相当な数字なのは間違いない。そうした王さんの活動の積み重ねが、いま、大きな輪へと着実に広がりを見せている。

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