姉への移植のため生まれた妹、論争から20年後に米テレビ番組で心境語る。

2011/06/16 17:29 Written by Narinari.com編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加


1991年、カリフォルニア州に住むある夫婦の行動が米国で大きな論争を巻き起こした。それは、白血病になった娘に骨髄移植をするドナーとして、子どもを新たにもうけたというもの。当時、米誌タイムが表紙写真と共にこの話題を報じると、市民や医師の間から「倫理に反する」といった論争が起こり、家族にも厳しい意見や手紙が多数寄せられたという。この話は2004年に小説が出版され、2009年にキャメロン・ディアス主演で映画化された「私の中のあなた」のモデルと言えば、ご存知の方も多いかもしれない。それから20年が経った先日、当事者の姉妹が米国のテレビ番組に出演し、率直な胸の内を語った。

今から23年前、当時16歳だったアニッサ・アヤラさんは、突然体の異変に襲われた。足首にこぶができ、激しい胃の痛みにも悩まされるようになり、病院で診てもらうと「白血病」との診断。さらに彼女の場合、白血病でも「珍しい型」(米ニュースサイトMSNBCより)の深刻な状態で、化学療法だけでは助からないと伝えられた。そのためアニッサさんへの骨髄移植が急務となり、父エイブさんや母メアリーさん、兄アイロンさんがドナーチェックを行ったもののいずれも型が一致せず。次の手段として広く骨髄提供者を探すことになった。

その後、一時は型が一致するドナーが見つかりながらも移植が実現しなかった等、苦しい時間を過ごしていた両親はある決断を下す。それはアニッサさんと型が一致するとの期待を込め、新たな子どもを作るというもの。メアリーさんはこのとき42歳、高齢出産の壁もあったが問題はこれだけではなかった。医師はメアリーさんの妊娠成功確率は「40%」と指摘したほか、エイブさんは以前行っていたパイプカットを修復。その2つを乗り越えても、新たな子どもとアニッサさんの骨髄の型が一致する確率は「23%」と、希望の実現には高いハードルがいくつも待っていた。

それでも少ない可能性に賭けた両親は、無事に妊娠に成功すると、1990年4月に待望のマリッサさんを出産。両親の願いは通じ、彼女は姉アニッサさんと同じ骨髄の型を持って生まれてきた。それから14か月後に妹から姉への骨髄移植が行われ、アニッサさんの病状は回復。家族は幸せを取り戻したのだが、タイム誌の報道をきっかけに周囲から厳しい目が向けられた。当時、家のポストには「嫌がらせの手紙」が多数寄せられただけでなく、今でも話を知る人々がひそひそ話をするのを目にするという。

“誰かに利用するために子どもを作って良いのか”―――20年前に米国内で大きな論争を呼んだこの家族。しかし他人がどう言おうと、姉のために生まれてきたマリッサさんは「愛と感謝に満ちた家族」に囲まれ、幸せだという。6月3日、米放送局NBCで放送されている朝の名物番組「トゥデーショー」に出演したマリッサさんとアニッサさんは、これまで語られてこなかった素直な胸の内を明かした。

自分の出生状況に未だ非難の声が聞かれることについて、「誰でもそれぞれの意見を持つ権利がある」と尊重する姿勢を見せた現在21歳のマリッサさん。その中で姉に対する気持ちを聞かれると、「彼女の病気がなかったら私はここにいなかったし、型が一致しなかったら彼女もここにいなかった」と答えた。一方のアニッサさんは、当時母から赤ちゃんを作ると聞かされたとき、自分のためにという気持ち以上に、新たな命が誕生する「幸せ」を感じ、妹の誕生を心から喜んでいたそうだ。

生まれるきっかけは姉のためだったとはいえ、しっかり両親の愛情を受け取って健やかに大学生へと成長した妹のマリッサさんと、自身も2人の子どもを生み、39歳の母親となった姉のアニッサさん。2人は普通の姉妹以上にお互いの幸せも喜びに感じられる、強い絆で結ばれているようだ。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.