英大学の新聞が「万引き指南」、小売り関係者などから怒りの声も。

2011/02/25 20:25 Written by Narinari.com編集部

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なにかモノを販売している店にとって、深刻な問題の1つとなっているのが客の万引き。大きな金額ではないと軽い気持ちで犯行に及ぶのは犯人側の勝手な論理で、利益を出すのに苦労をしている店側にとっては、被害額がどの程度であっても大きな痛手だ。万引きはどのような事情があっても正当化できることではないが、英国ではある大学の新聞が“万引きのやり方”を解説する紙面を作り、波紋を広げている。編集者は「英国政府が推し進めた学費値上げ策に対する皮肉」と説明しているが、店の経営者らは「ジョークにもならない」と怒りを露わにしているそうだ。

英紙イーストロンドン・アドバタイザーやデイリー・メールなどによると、批判の矢面に立っているのは、ロンドン大学クイーンメアリー校で学生向けに発行された大学新聞。1月29日、12ページの紙面で9,000部が刷られた新聞には「万引きのハウトゥ―ガイド」(イーストロンドン・アドバタイザー紙より)が掲載されていた。もともとは「オーストラリアの学生新聞で1995年に書かれた」ガイドを基に作成したとされる今回の記事は、当然ながら社会のルールに反する内容で、決して許されるものではない。しかも、この新聞は大学の政治倫理センターが資金を拠出し、発行しているという点がさらに批判を過熱させた。

デイリー・メール紙によると、そこには万引きを行う際に注意すべきポイントが具体的に書かれているという。例えば、店に入ったら「監視カメラの位置を確認」し、店員に捕まったら「警察に電話をしないようお願いしろ」など、中身はまさに“ハウトゥ―”だ。さらに警察官がやってきた場合、初犯であるように思わせるために「極端に怖がるフリをするのも良い考えだ」などと書いてあり、大学側のモラルに疑いの目が向けられても仕方がないのかもしれない。

メディアの注目も集めたこの内容について、大学側は記事の内容を「皮肉」と釈明している。英国政府は昨年末、国の財政悪化を受けて大幅な歳出予算削減と増税を柱とする財政再建策を取りまとめ、その一環として教育分野に向けられる予算削減法案も可決された。この結果、学生が払う大学の授業料上限額が現在の3,290ポンド(約44万円)から、2012年には9,000ポンド(約120万円)と大幅に引き上げられるため、昨年12月の法案可決時にはロンドンで学生らによる大規模なデモが発生。チャールズ皇太子らが乗っていた車が、ロンドン市内を走行中に学生らから襲撃された事件が報道されたのも、記憶に新しいところだ。

つまり、学生らの生活を苦しくさせる学費値上げへの「皮肉」を表したものと説明している大学側。これに対し英国小売協会のアンドリュー・ドッドさんは「違法でないにしても、このガイドはあまりにも無責任だ」と痛烈に批判している。毎年数千もの万引き事件が発生し、スタッフが危険にさらされる場合もあるほか、被害のしわ寄せは「正直な購買者の代金に反映されることになる」とも語り、「笑いごとじゃない」と怒り心頭だ。

ちなみに、「万引きをしなくてはならないほど、生活が苦しくなる」との学生の気持ちを代弁したつもりで騒ぎを自ら招いてしまった大学新聞だが、残念ながら新聞を見た学生の間でも、あまり共感は得られていないという。

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