父にわざとHIVを感染させられた男性、恋人の存在が活力となり驚異の回復。

2011/02/17 20:53 Written by Narinari.com編集部

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米国で暮らす19歳のブライアン・ジャクソンさんは、自身の意思や行動とは全く関係なく、HIVに“感染させられた”男性。彼がまだ1歳にも満たない赤ちゃんだった頃、母親との離婚問題がこじれた父親によって、わざとHIVウイルスに感染した血液を注射されてしまった。成長していく中で、一時は余命数か月と宣告されるほど絶望的な状況だったものの、現在は立派な大人となり、大学生として元気に日々の生活を営んでいる。これには高校時代にできた恋人の存在が体にも良い効果をもたらしているそうだ。

米放送局ABCや英紙デイリー・メールなどによると、ミズーリ州セント・チャールズの大学1年生ジャクソンさんが不幸な出来事に巻き込まれたのは1992年、生後11ヶ月のことだった。喘息を患い病院で横になっている彼に近づいた医療従事者の父親は、意図的にHIVウイルスに感染した血を彼に注射したという。このとき、ジャクソンさんの両親は離婚協議中で、父親は養育費の支払いから逃れようと、彼をHIVに感染させる計画を立て実行に移した。間もなく彼の体調には異変が現れ、心配した家族が病院へ連れていったところ、HIVウイルスの感染が発覚。その後、警察の捜査で父親は犯行を自供し逮捕され、1998年に終身刑の判決を受けている。

しかし、父親は終身刑で落ち着いても、彼には着実に“死”が迫ってきていた。5歳の時点で「エイズが発症した」(米放送局ABCより)彼は、医師から「余命数か月」との宣告を受ける。母ジェニファーさんは「医師から葬式の準備をするように言われ、次の日のことも考えられない」ほどの絶望を感じながらも、ほか4人の兄弟たちと共に家族一丸となって彼を支えた。

すると、大量の薬を服用したおかげで、医師が宣告した余命を越えて生き続けられるように。しかし、その代償として、彼は薬の副作用により7歳で聴力を失い、「軽い言語障害も患った」(デイリー・メール紙より)という。

家族の支えと懸命な治療により、彼にもようやく落ち着いた生活が訪れるかと思われたが、今度は通学していた学校でいじめや偏見が待ち受けていた。同級生と一緒の水道を使うことができず、毎日水筒を持参していたほか、彼だけが使う洗面所を用意されたり、友人の誕生パーティーに呼ばれなかったりと、周囲は彼を徹底して疎外。こうした経験から人間不信にも陥ったそうで、「誰とも関わりを持ちたくないし、恋愛も絶対しない」と強く思い込んでいたそうだ。

そんな彼に転機が訪れたのは高校時代のこと。すっかり思春期を迎えるまでに成長したジャクソンさんは、あるパーティー会場で車から降りてきたブランディ・ワイアットさんを目にすると、一瞬で恋に落ちてしまった。一方、パーティーの最中で彼の存在を知った彼女も、一目見て気に入り意気投合。2人は一晩中話し合う仲となり、交際をスタートさせた。

自身のこれまでの人生もしっかり受け入れてくれた彼女は、すぐにジャクソンさんにとってかげがえのない存在に。すると、大切な人が出来て活力が湧いてきたのか、充実の人生を歩み始めた彼の体にも驚きの変化が現れた。

今でも毎日3つの薬を飲み、3か月おきに定期健診を受けているそうだが、彼女との交際がきっかけであるかのように、血液検査でウイルスが検知されなくなったという。これには医師も驚いているそうで、日々体の充実を感じているジャクソンさんは「彼女が病気と闘う力を与えてくれる」おかげと話している。

さらに、過去の体験からHIV感染者への偏見撲滅運動を始めたジャクソンさんは、「Hope Is Vital(H.I.V.)」という非営利団体を設立。学校やパーティーなどに出向いては、「私だけの問題ではなく、みんなの問題」(ABCより)とHIV感染者に対する理解を訴えている。

毎日をたくましく、前向きに生きているジャクソンさん。今年4月には仮出所の予定とされる父親についても「憎んでも自分に良いことはないから」と、許す気持ちになっているそうだ。

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