TV放送の夢追いアニメ手売り、ニューヨークの地下鉄車内でDVDを4万枚販売。

2011/02/02 18:22 Written by Narinari.com編集部

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米ニューヨークに、地下鉄の車内で自作アニメのDVDを手売りしている46歳のアニメーターがいる。彼は「いつかこのアニメをテレビで放送させたい」との夢を追いかけ、DVDを1枚1ドル(約80円)で売り続け、この2年間に4万枚を販売してきたそうだ。

この男性は「Screen Arts Animation」という小さな制作会社を経営しているマーク・スタンズベリーさん。最近は地元放送局の番組作りや音楽ビデオの制作もしているというが、もともとは「マッハGoGoGoや鉄腕アトムに影響を受けた」(米紙ニューヨーク・デイリーニュースより)そうで、本当にやりたいことは自分でアニメを制作することだった。

彼がアニメの制作を志し、ニューヨークにやってきたのは今から18年前のこと。しかし当時28歳の彼はすでに既婚者で、妻や子どもたちも自分の夢に巻き込むことになってしまった。しかもアニメ制作に関する知識を当時何も持ち合わせていなかったため、家族を抱える彼は「学校に行く金がない」ことから、アニメ制作のイロハをすべて独りで学んだ。

ちなみに、彼と妻の間には現在21歳から5歳まで、4人の男の子と4人の女の子、計8人の子どもがいる。家族を養う必要もあるのに、大きな夢を追いかけていて大丈夫なのかと心配になるところだが、2009年1月に取材を行った映画評論家のジェームス・ヴァン・マーネン氏のブログによると、彼はかつてゼネラル・モーターズの工場で長年働いた経験があるとのこと。最後は工場閉鎖に伴い退職に追い込まれ、その際に結構な額の退職金を得たそうで、それをスタジオ開設の資金と生活費に充てたという。

そんな彼が「自分の子どもたちのため」(YouTubeのScreen Arts Animationチャンネルより)に生み出したのが、苦手なパソコンを使用せずに制作した手描きアニメ「Puddin」だ。この作品では、Puddinと呼ばれる10歳少女のサクセスストーリーが描かれている。舞台は1970年代のニューヨークで、この街の特徴を分かりやすく表現したいと、Puddinはヒスパニック系の母親とアフリカ系の父親との間に生まれた黒人、親友は近所のチャイナタウンで暮らす中国系の女の子という設定にした。

YouTubeには「Puddin」の作品がいくつか公開されているが、声の出演者としてクレジットされているのは全員彼の家族。どうやら、子どもたちも父親の夢の実現に向けて、快く協力しているようだ。

チャンネル開設後の約10か月で、すべての動画の再生回数が2,900回という数字を見る限り、もっと人の注目を集める工夫をしなくてはならなそうだが、彼が地下鉄車内でDVDの販売をしているのは、もちろん認知度を上げるため。主人公の絵がプリントされたTシャツを身に付け、だいたい朝の時間帯に1日5時間ほど手売りをしている。売り上げはアニメのテレビ放送化実現の資金として貯めており、これまでの実績は2年間で4万枚。購入者の中には「家族全員が楽しみにしている」(ニューヨーク・デイリーニュース紙より)と話す人もいて、少しずつ名前が広がっているようだ。

2011年の販売目標は過去2年の実績を上回る10万枚と強気だが、「たとえDVDを買わないにしても、みんなシャツの絵は見てるよ」と前向きなスタンズベリーさん。そんな彼の夢が、遠くない将来に実現できるよう願いたい。

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