生徒1人に教師19人の小学校、中国政府の命令で閉校寸前の学校が話題に。

2010/10/24 12:19 Written by Narinari.com編集部

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学校の生徒の数が大幅に減ってしまえば、そこで余剰となる教師の数も減るのは当然のこと。しかし、中国のある小学校では生徒がたった1人しかいないにも関わらず、教師は19人もいるという。なぜこのような状況なのだろうか。

中国紙華西都市報などによると、この小学校は中国四川省成都市にある清水小学校。10月22日現在、同校には小学4年生の女の子・孫悦ちゃんしか在籍していない。というのも、彼女以外の生徒は、全員転校してしまったからだ。

ほかの生徒が転校してしまったのは、親の都合や学校の問題というわけではない。政府が同校の土地を別の用途で使用するため、全生徒に転校するよう命令を出していたためだ。これを受け、8月下旬頃から清水小学校に通う生徒たちは次々と転校。しかし、孫悦ちゃんだけは家庭の事情で転校手続きが滞り、1人だけ同校に取り残されてしまった。

たった1人とはいえ、教師が生徒を身捨てるわけにはいかない。そこで孫悦ちゃんが無事に他校へ転校できるその日まで、19人の教師が彼女の面倒を見ているというわけだ。

教師と生徒を合わせても20人しかいない校舎の中は、学校とは思えないほど静寂に包まれている。孫悦ちゃんは毎日午前8時過ぎに自転車で登校するそうだが、授業が終わる午後4時頃まで一日ずっと独りぼっち。もちろん、教師が話し相手になっているものの、同年代の子どもとコミュニケーションを取る機会は一切なく、朝から晩まで常に大人に囲まれた生活を送っている。

地元紙の記者が同校を訪れたところ、教室内では孫悦ちゃんが1人で机に座り、アルコールランプで実験をしていたという。教師は孫悦ちゃんの傍らで塩水が蒸発する過程をマンツーマンで説明していたそうだ。理科の授業が終わるとそのまま音楽室へ向かい、今度は教師の前で歌を披露。いろいろと唄い方についてのアドバイスを、やはりマンツーマンで受けていたという。

教師の大人とは話せても、遊び相手がいない状況は不憫にも思えるが、孫悦ちゃん自身は至って前向き。「焦らない、焦らない」といつも自分に言い聞かせるとともに、「先生と1対1で授業を受けられる」状況に喜びも見出すようになってきたそうだ。もちろん、教師たちも彼女を気遣っていて、カバンを職員室で預かってくれたり、気持ち良く授業が受けられるようにと、朝早く出勤して学校の掃除などをしているという。

体育教師は「いつも一緒に走ったり、球技をしたりしなければならないから汗だくです」と冗談を言うが、ほかの教師も本音では問題があると感じているのは事実。孫悦ちゃんと19人の教師のこの生活はもう少し続く見込みだが、孫悦ちゃんが無事に転校を済ませ、教師たちが安堵できる日が一日も早く訪れることを願うばかりだ。

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