信じてはいけない「5秒ルール」、重要なのは時間ではなく落とした場所。

2010/07/25 16:44 Written by Narinari.com編集部

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食べ物を下に落としても急いで拾えば、口に入れても大丈夫――。科学的根拠はともかく、俗に言う“5秒ルール”と呼ばれる類の法則は、日本のみならず世界に存在している(※日本では“3秒ルール”と呼ばれることが多い)。人や国、地域などにより、その基準は3秒や10秒などさまざまなパターンがあるが、腹を下さなければ大丈夫と高をくくっていると、いずれ痛い目にあうかもしれない。米国の大学研究者らは、実際に下に落とした食べ物にどのように細菌が移るのかという調査を実施。すると、中にはすぐに移動する菌も見つかり、研究者は“0秒ルール”を適用するよう促している。

米国では一般的に“5秒”で広まっているというこのルール。以前よりその信憑性を探るべく、科学的なアプローチでさまざまな研究が行われ、否定的にも肯定的にも捉える報告が出ているが、米誌ナショナル・ジオグラフィック7月号がこの話題を取り上げたことをきっかけに、欧米で議論が再燃しているようだ。

これまで行われてきた研究のひとつとして、米紙シカゴ・トリビューンではコネチカット大学の研究結果を紹介している。学生研究者が大学の食堂の床にリンゴのスライスとキャンディをそれぞれ5秒、10秒、30秒、60秒置き、細菌の移動具合を検証したもので、リンゴのスライスでは1分後、キャンディの場合は約5分置いたものからバクテリアが検出された。また、同様の研究の結果、「“5秒ルール”は食べ物の無駄を失くすことができ、子どもたちの免疫系を改善できる」と結論付けた別の大学の報告もあるという。

しかし、ナショナル・ジオグラフィック誌で研究者たちはこうした見方を否定。また、これを引用する形で伝えている欧米メディアも“5秒ルール”に「待った」をかけている。

米サウスカロライナ州にあるクレムソン大学で食物科学を専門とするポール・ドーソン博士らは、食中毒を引き起こすサルモネラ菌などは「乾いた表面なら最高4週間生きながらえる上に、すぐに食べ物へ移動する」と主張。問題なのは“時間”ではなく“場所”であり、この点については多くの研究者の見解は一致しているそうだ。ドーソン博士は以前より“場所”の危険性を説き、クレムソン大学ホームページ内でも動画付きで研究結果を紹介。ボローニャソーセージとパンを使って学生らと検証した動画では「テーブル上や床から食べ物に、バクテリアが5秒以内に移った」と説明している。

また、コロラド大学医学部で細菌学教授を務めるハーレイ・ロトバート博士も、土にいるものより危険な細菌が潜む「生肉などを扱う台所周辺が危険」(シカゴ・トリビューン紙より)と具体的な“場所”を挙げて危険性を指摘。やはり考えるべきは“時間”ではなく“場所”というわけだ。

ちなみに、米紙シアトル・タイムズでは1,000億の細菌がいる人間の口の中や、2万5,000いるとされるオフィスの電話など、いくつかのデータを掲載。これらに対し、便座の上は1平方インチにつき細菌数が49しかなく、不潔と思われがちなトイレよりも細菌がはるかに多い場所やモノはたくさんあると、研究者たちの主張を“補強”している。

とはいえ数の大小に関わらず、重要なのは細菌の有毒性。人体に潜む細菌には、もちろん有効に働くものもあるが、外の世界で生きる細菌には危険な影響を及ぼすモノも少なくない。無駄な危険を減らすためにも、もったいないとは思っても“5秒ルール”は信じないほうが無難なようだ。

なお、米Clorox社が今年2月に発表した調査結果では、米国の子を持つ父母500人のうち65%が“5秒ルール”を信じ、それに従っているという。


☆同様の検証は日本のテレビ番組でも

今年6月に放送された「所さんの目がテン!」(日本テレビ系)のテーマ「抗菌グッズ効くか実験」の中で、「3秒ルールは本当に大丈夫なのか」との検証が行われた。実験は台所の床にクッキーを置き、3秒、10秒、20秒、30秒と順番に拾い上げて付着した菌を調べたところ、秒数による菌の数の違いはほとんど見られなかった――という内容だ。ただし、付着した菌の中には食中毒を引き起こすものもあるため、「落としたものは拾って食べるのはやめたほうが良い」と結論付けている。

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