事故で1日しか記憶が持たない女性「毎日同じ日を過ごしてるみたい」。

2010/06/11 16:10 Written by Narinari.com編集部

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愛するパートナーの記憶が1日しか持たず、毎日消えていくとしたら――。そうした辛い現実に直面したとき、人はどのようなことを想いながら、パートナーを支えていくのだろうか。

英リンカンシャー州スポールディングに住む47歳のミシェル・フィルポッツさんは、過去に2度の交通事故に遭った影響で脳にダメージを負った。最初は1985年のバイク事故、2度目は1990年の自動車事故。その結果、1994年までの記憶はしっかりと残っているものの、以降については一切記憶がなくなってしまう。彼女は前向性健忘症という症状に陥り、新しい物事を記憶する能力を失ってしまったためだ。

彼女が異変に気が付いたのは、2度目の事故に遭った後から。当時、弁護士事務所で働いていたミシェルさんは1日中同じ文書のコピーを繰り返し、家に帰されたという。それからはぼんやりすることが多く、発作にも襲われるようになり、1993年には仕事を辞めざるを得ない状況にまでなった。

そして1994年、ミシェルさんは癲癇(てんかん)との診断を受ける。2005年の手術で発作は起きなくなったものの、前向性健忘症の症状は残り、特殊な状況の中で生活を営むことになったのだが、そんな彼女を事故前から支え続けたのが、夫のイアンさんだ。

ミシェルさんとイアンさんが出会ったのは1985年、彼女が最初の事故に遭う前で、知り合って3か月後にはプロポーズするほど順調な交際を続けていた。しかし、2度の事故もあり、2人が結婚を果たしたのはプロポーズから12年後。その間、イアンさんは事故の後遺症に苦しむミシェルさんを間近で見守り、支え続けていたという。

「事故の前に出会っていたから彼女も僕を覚えていられて、ラッキーだよ」と話すイアンさん。しかし、1994年以降の記憶がないミシェルさんの頭の中には、当然ながらイアンさんとの結婚式の思い出は残っていない。

デイリー・メール紙に対し「イアンと結婚しているのは分かってる」と話すミシェルさんだが、そう記憶してるのもその日だけ。ときどき結婚の事実も忘れてしまい、そのたびに彼はアルバムを持ち出して結婚式の写真を見せているそうだ。すべてを受け入れ、愛を貫いているイアンさんだが、こうした毎日に「確かにとてもイライラさせられることはある」と率直な気持ちも語っている。それでも「私は彼女を愛しているから」と、辛抱強く向き合っていくことに決めているそうだ。

イアンさんの愛を一身に受けているミシェルさんは、現在ホームヘルパーの世話も受けながら元気に生活を送っている。何か必要なことがあれば、携帯電話や付箋に逐一メモを残して対処。「来る日も来る日も、同じ日を過ごしてるみたい」(サン紙より)と、自分の状態はしっかり認識できているという。

ただ、道が覚えられないため家からはあまり出られず、「ときどき家が刑務所に思えて、憂鬱になる」とも。そうした日常の中でも、彼女は「同じ内容のテレビ番組を見たことがない」「どんな冗談も聞いたことがないから楽しい」とポジティブな側面も見つけ、自分の状態と上手に付き合っているようだ。

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