スカイダイブ失敗も命救う、インストラクターが女性客の“盾”に。

2010/06/04 10:53 Written by Narinari.com編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加


数千メートル上空からの急降下を楽しむスカイダイビング。経験を積んで余裕ができれば強烈なスピード感と広く見渡せる景色が堪能でき、爽快感を得られることは間違いないが、ちょっとしたアクシデントが起きようものなら命を落とす危険性があるだけに、最初は恐怖を感じる人も多い。米国のある女性は、そんな初ダイブでパラシュートが開かないという、まさかの事態に遭遇した。しかし、一緒にピタリと付いて飛んだインストラクターが女性を守るために、自分の体を下に潜り込ませ、“盾”になるような格好で2人はそのまま地面に激突。女性はインストラクターのおかげで首を痛めただけの軽傷で済んだという。

昨年8月1日、この日54歳の誕生日を迎えたシャーリー・ダイガードさんは、米テキサス州ヒューストンのダイビングクラブを訪れた。「長男にとても信じられない感覚と言われた」(英紙デイリー・メールより)ことがきっかけで、スカイダイビングをやってみたいと思ったというダイガードさん。夫や長男、3人の孫が地面で見守る中、次男とともに高さ1万3,000フィート(約4,000メートル)上空へと飛び立った。

そして、インストラクターのデイブ・ハートソックさんが一緒に付く形でダイガードさんは飛行機からダイブ。念願が叶い、眼下に広がる田園風景を大いに楽しんでいた彼女だったが、すぐに血の気が引く事態が起きる。ハートソックさんが紐を引っ張っても、パラシュートが完全に開かなかったのだ。中途半端な状態のパラシュートは、不運にも2人の体勢を不安定にさせ、螺旋を描くように落下し始めたという。  

異変に気付いたダイガードさんが質問すると、ハートソックさんからは「待って、大きなトラブルが起きた」と恐ろしい言葉が返ってきた。必死にパラシュートを直そうとしても、回転しながら落ちているために「遠心力でパラシュートのコードに届かない」(英紙デイリー・ミラーより)ため、インストラクターの手でも、もはや修正不可能の状態。このとき、ダイガードさんはさすがに「私は死にそうなんだ」と自覚したという。

制御不能の中、ハートソックさんはメインパラシュートをそのままに、何とか予備パラシュートに手をかけた。ところが、今度はメインと予備がからまってしまい、結局2人はそのまま地面に激突。その直前、客の安全を最優先に考えたハートソックさんは、何とか彼女を助けようと自分の体を下に滑らせてクッションとなるよう、最後の努力を見せる。その甲斐もあってダイガードさんは首を痛めただけの軽傷で済み、1週間の入院で無事回復となった。

一方、地面に叩きつけられる形となったハートソックさんは、辛うじて命は取り留めたが、脊髄損傷の大けがを負う。首から下には麻痺が残り、現在は車いすでの生活を余儀なくされているそうだ。だが幸いにも、最近は体調が安定しているとのことで、先日2人は事故以来初めて対面を果たしたという。顔を見るなりすぐに泣いてしまったダイガードさんに、ハートソックさんは「冗談を飛ばして、笑わせてくれた」(デイリー・メール紙)と前向きな対応。どこまでも頼りがいのある対応に、ダイガードさんは「彼は本当の意味でヒーローだ」と、最大級の感謝を贈った。

これに対しハートソックさんは、「私はしなければならないことをしただけ」「私がヒーローとは思えないよ」と控えめに語る。今は72歳の母親の世話に頼る毎日というが、「多少の運動機能は回復するかもしれない」(英紙デイリー・テレグラフ)と希望も見えている様子。動けるようになったら、ダイガードさんともう1回一緒に、スカイダイビングをしようと話しているという。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.