訴訟で生計立てるホームレス、少なくとも4件の和解で40万ドル得る。

2010/06/01 14:02 Written by Narinari.com編集部

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“訴訟大国”と言われる米国では、日本では信じられないような訴えや賠償金額が認められるケースも少なくない。しかも、中には訴訟を起こしては賠償金を手にして生活するホームレスもいるそうだ。米国の61歳の男性は、20年前に図書館を相手にした訴訟で23万ドル(約2,100万円)を勝ち取ってから、これまでに40万ドル(約3,650万円)を荒稼ぎ。わざと体臭をきつくして追い出されるように仕向けては、「市民権」を盾に自治体や公共機関を訴えるそうで、次は鉄道会社を標的にしているという。  

この男性は、ニュージャージー州を拠点にしているホームレスのリチャード・クレイマーさん。彼は20年前、ニュージャージー州の図書館で体臭を理由に追い出されたのを「市民権の侵害」と訴え、23万ドルの和解金を受け取った。これに味をしめたクレイマーさんは、医者や薬局チェーン店、カフェ、自治体などに因縁をつけては、次々と提訴。その成果を米紙ニューヨーク・ポストは「この20年間で、少なくとも4件の和解で40万ドル」と伝えている。

米ブログメディアGothamistでは、クレイマーさんの“因縁のつけかた”を説明している。まず、「資金が少なくなったときは、入浴を止めて」わざと自分の体臭をきつくさせて準備を開始。そして、店や公共の場所でうろついては、「放り出せるものならやってみろ、と挑発することに時間を費やす」のが手口だという。しかも、「長期に渡って裁判をする相手よりも、和解にもっていきそうな小さな機関」を狙うなど、標的の定め方まで熟知しているから、“プロ”と言えるのかもしれない。ちなみにGothamistは、「彼の名前は本当にクレイマーです」と念を押している。

クレイマーさんがホームレスの生活へと足を踏み入れたのは、1980年に親類との争いで家を失ってから。神経の問題や糖尿病を抱えているため「働けない」と主張しており、やむなく自称「訴訟屋」として生計を立てているらしい。かつては「コロラドとウッドバリーに家を借りた」(ニューヨーク・ポスト紙より)ものの、2005年には「両方とも失った」そう。また、かなりの額の和解金を受け取ったのが仇となり、「メディケード(低所得者向け医療保障制度)を落とされ」た結果、現在糖尿病の治療に月2,000ドル(約18万円)かかっているという。 

こうした事情から、クレイマーさんは虎視眈々と、訴訟を起こしては和解金を得ようと企んでいる。次は、駅から強制的に追い出されたとして、鉄道機関のアムトラックとニュージャージー・トランジッドを訴える準備をしているそうだ。しかし、こうしたクレイマーさんの行動も、いつまでも続けられないかもしれない。過去に痛い目にあった自治体の関係者が匿名を条件に取材に応え、「彼のような人に対処する唯一の方法は、無視すること」(Gothamistより)とコメント。手口が知られるに従って、対策を考える相手も増えてるようだ。

1985年にサービス拒否されたマクドナルドを訴えなかったことを「私の訴訟キャリアの中で、一番の後悔」と悔しがっているというクレイマーさん。訴訟ビジネスに生活を頼るのは疑問だが、少なくともきれいな服を着て、携帯電話にATMカードまで持つ彼は、世界屈指の「金持ちなホームレス」であることは間違いなさそうだ。

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