他人の電話の声に苛立つ理由は「会話の半分しか分からないから」。

2010/05/27 03:40 Written by Narinari.com編集部

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携帯電話の普及とともに出てきたのが、利用者のマナーの問題。特にバスや電車の車内、レストランなどの屋内で状況に構わず携帯電話で話していると、周囲から冷たい視線を注がれるのは必至だ。それは社会のルールを守っていないという常識的な意味合いもあるが、聞きたくもない人の大声を聞かされることを不快に感じるという人も多いかもしれない。しかし、他人が携帯電話で話している声を不快に思うのは、どうもボリュームの問題だけでもないようだ。

英紙インディペンデントによると、米コーネル大学で心理学を研究するマイケル・ゴールドスタイン助教授と、博士課程に在籍中のローレン・エンバーソンさんは、他人の携帯電話の話し声を不快に感じる仕組みや理由を探る研究を行った。その結果から分かった理由は「会話の半分しか分からないから」。周りで声を聞く人にとって、電話の向こうで話す人が何を話しているかわからないのが、ストレスを感じる要因になっているというのだ。

特に聞こうと思わなくとも、よほど別のことに意識していない限り、耳に入る他人の話し声は気になってしまいがち。エンバーソンさんも、他人の話し声を「無視するのが難しく、注意を逸らすことができない」(英紙デイリー・テレグラフより)と話している。この、つい話を追ってしまう行為が、携帯電話で話している人の声を聞くときに厄介になるらしい。

エンバーソンさんによると、通常他人同士の対話を耳にする場合、聞いている人は「活発に、次に何を言うか予測する」(インディペンデント紙より)という。それと同時に、対話の流れを追う作業を自然に行っているそうだが、携帯電話で話している人の場合は、耳に入るのが一方の話者だけになるのが問題。声を聞いている人は対話者の情報が分からずに流れを追うことになり、「会話を理解してブランクを埋めるため、脳が2倍働く必要がある」(デイリー・テレグラフ紙より)という。聞こえる方としては、望まなくとも気になってしまい、「信じられないくらい、イライラさせる」結果を引き起こすそうだ。

この“半分の会話”が周りの人にどれだけ影響を与えるのか、エンバーソンさんらは大学生を対象にした実験も行っている。デイリー・テレグラフ紙によれば、41人の大学生を、2人の会話を聞かせながらテストを受けたグループ、半分の会話を聞かせたグループに分け、その結果を比較。すると、半分の会話を耳にしながらテストを受けた学生の方が「より多くの間違いをした」とし、半分の会話を耳にした人の集中力に影響が出ることを示している。

エンバーソンさんらはさらなる検証の必要性を認めながらも、他人の携帯電話の話し声が「なぜイライラするのかは、説明できた」(インディペンデント紙より)と内容に自信を覗かせている。また、この結果を踏まえ、エンバーソンさんは特に「運転手の注意が、乗客の携帯電話の会話によって損なわれることを示唆している」とも指摘。バスやタクシーなど、車内の危険性を検証する実験を実施しなければならないと考えているそうだ。

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