多すぎる車に歩行者信号連打で抗議、沿道住民が交通妨げる“実力行使”。

2010/05/06 14:52 Written by Narinari.com編集部

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「自宅の脇を走る道路がそれほど広くないのに、車の往来が激しい」と怒る77歳の英国人男性は、街への度重なる陳情も効果がなく、我慢は限界に達していた。そこで男性は“実力行使”を決意。ドライバーや行政に向けた抗議として、押しボタン式の歩行者横断用信号を利用し続けるという方法で車の往来を妨げることにした。  

長年にわたって自宅周辺の交通問題に頭を悩ませていたのは、ドーセット州チディオック村に住むトニー・フラーさん。というのも彼の自宅脇には、英国南部を走るA35と呼ばれる幹線道路があり、交通量が多いそう。その上、道幅がそれほど広くないにも関わらず、トラックの往来が多いことに不満を溜め込んでいたらしい。英メディアに掲載された写真を見ると、現場の道幅は普通乗用車がすれ違うのにちょうど良いくらいで、日本の街中でもよく見かけそうな程度だ。しかし、フラーさんが怒るのには理由がある。

英放送局BBCによると、フラーさんの自宅には過去に2度車に突っ込まれ、そのうち1件はドライバーが亡くなる死亡事故だった。「高速道路のように」走る無謀なドライバーが多いことに加え、この辺りには歩道が整備されてない地域もある。また、排気ガスによる環境汚染や、振動による建物の沈下の影響もあると主張するフラーさんは、これまでに50通以上も警察や地元議会へ陳情の手紙を送り続けたそうだ。その中身は、村の中を避けるようにバイパスを建設し、通行する車を誘導して欲しいというものだった。

2012年に控えたロンドン五輪の影響で、周辺では道路整備事業も行われているそうだが、残念ながらチディオック村の整備は数年前に“断念”の方針が決定。変わらない状況に業を煮やしたフラーさんは、ほかの地元住民にも呼び掛けて、自分たちの不満を訴える“実力行使”を画策した。その方法は、フラーさんらが横断歩道の信号を利用し続け、車の往来を妨害しようというもの。この計画に50人の住民が支持を表明し、4月30日と5月4日に行われたアクションには20人の住民も参加したそうだ。

この結果、2時間半活動したという4月30日には「4マイル(約6.4キロ)の渋滞を引き起こした」(英紙ガーディアンより)とされている。これにはフラーさんらに「攻撃的に叫ぶドライバーもいた」とも。しかし、行動自体は法律に触れるものではないため、通報を受けた警察もフラーさんらに警告を与えるだけで引き返したという。ただし「無期限に続けるのは、正義を意味しない」(英紙タイムズより)との指摘もあるように、繰り返し行動を起こせば公的不法妨害の罪に問われ、逮捕される可能性も出てくるようだ。

それでもフラーさんは「そうなるなら、私は刑務所に行くつもり」と決意は固い。横断歩道利用以外にも、フラーさんは「大きなトラックは別ルートへ」(英紙サンより)や「7.5トン以上のトラックはダメ」(英紙デイリー・メールより)といったプラカードを掲げ、主に大型トラックへの抗議も見せている。ただ、ドライバーからしてみれば幹線道路を利用するのは当然のことで、フラーさんら地元住民との軋轢は、自治体や警察が何らかの方針を決めない限り、しばらく続くことになりそうだ。

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