他界した夫のパネルと暮らす家族、葬式用に準備も今では大切な存在に。

2010/05/01 15:17 Written by Narinari.com編集部

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英国に住む36歳の女性は、不幸にも夫が脳腫瘍を患い、昨年38歳の若さで先立たれてしまった。すると、女性は夫の等身大パネルを作成。もともとは葬式のために準備したものだったが、その後も日々の生活をともに過ごし、友人の結婚式にも一緒に行くなど、大切な存在になっているという。

英紙デイリー・テレグラフやデイリー・メールなどによると、チェシャー州ネスに住むマリア・チャリスさんと夫のポールさんは、15年前に働いていた会社で出会い、2000年に結婚。その後ネスに移り住んだ2人は住宅リフォーム会社を起業、2人の子どもにも恵まれた。

仕事も家庭も順調、幸せな生活を送っていた2人に、突然の不幸が訪れたのは2009年2月のことだ。前年末のクリスマス頃から感じるようになった頭痛を薬で対処していたポールさんは、2月7日、異変に襲われ病院で検査を受けた。その結果、ポールさんの脳に2つの腫瘍が発見され、医者からは「手の施しようがない状態で、余命数週間」と告げられた。

「まっすぐながらも時々癪にさわるほどいたずら好きで、とてもとても楽しい」(英紙デイリー・テレグラフより)夫が直面した現実に、ショックを受けたマリアさん。そんな妻に対し、自分の状況を冷静に受け止めたポールさんは、マリアさんの再婚を願うほど、優しい気遣いを見せたという。それからポールさんの身体は日を追うごとに悪化。4月には言葉を話すことも難しくなり、車椅子の生活を余儀なくされた。

それでも「残りの時間を暗く過ごさないよう固く決めた」という2人は、子どもたちとともに大切に過ぎゆく日々を刻む。パーティー好きだったポールさんのため、知人らも入院中の病院にお酒やご馳走を持ち込んだり、4月末には自宅でポールさんの誕生日パーティーを盛大に開くなど、思い出作りに加わった。こうして1日1日を数えながら過ごした夫婦生活にピリオドが打たれたのは2009年7月。5か月間の闘病生活を終え、ポールさんは息を引き取った。

そして、事前に自分で計画を練ったポールさんの意向に沿い、クイーンの曲を流すなど「例によって、おかしな忘れがたい雰囲気」で葬式が行われたという。どこまでも陽気な夫は「常にパーティーの花形だった」ことから、マリアさんも一計を案じた。それは、葬式のためにポールさんの約185センチの等身大パネルを作成し、彼の“最後のパーティー”に出席させようというもの。夫婦でクイーンエリザベス2世号に乗ったときの、シャンパンを持った「彼の最も幸せな瞬間」を写した姿は、まさに普段見ていた夫のキャラクターそのものだった。

ところが、葬式のために用意したはずの等身大パネルは、その後も家族の大切な存在に。あまりに最高な夫の姿に、マリアさんもパネルを離すことができなくなってしまったが、これには「2人の子どもたちに、生きている姿を記憶し続けさせる」(英紙デイリー・エクスプレスより)という願いもあったようだ。現在も家で家族を見守り続けているポールさんのパネルは、葬式から間もなく行われた友人の結婚式にも出席。そのときにはネクタイを締め、胸ポケットには花も挿していた。

いまやクリスマスやハロウィンにサンタやドラキュラのコスチュームを着せ、7歳の息子と9歳の娘の父親としての役目を果たしているというポールさんのパネル。マリアさんはパネルを作成したことについて「中には眉をひそめる人もいるかもしれない。でも悲しみに対処する方法に、どれが正しくてどれが悪いなんて、誰が言い切れるの?」(デイリー・エクスプレス紙より)と話している。周囲の見方はそれぞれかもしれないが、いたずら好きで陽気なポールさんなら、妻のアイデアを喜んでいるかもしれない。

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