いまや仕事や勉強の必需品、のり付き付箋「ポスト・イット」が30周年。

2010/04/27 12:02 Written by Narinari.com編集部

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「参考書の重要なページに」「仕事上の予定をパソコンのディスプレイに」と、いまや勉強や仕事の場で欠かすことのできない文具となったのり付きの付箋。その先駆けとなったのが、米国の3M社が1980年に発売した「ポスト・イット」だ。日本でも1981年に販売を開始、サイズや色、デザインも豊富なバリエーションを取り揃えた現在は世界150か国で利用されており、この4月には発売30周年を迎えた。

「ポスト・イット」は、3M研究員の失敗とひらめきによって誕生したもの。1969年、同社研究員のスペンサー・シルバー氏は、新しい接着剤の開発に取り組んでいた。後に「ポスト・イット」で活用されるこの接着剤は、当初「残念ながら、彼はこれが何に利用できるのか全く浮かばなかった」(カナダ紙ナショナル・ポストより)という失敗作。ところが1974年、同じく研究員のアート・フライ氏が「メモ帳に接着剤を使うというアイデア」(英紙ガーディアンより)を思い付き、試行錯誤を経て「ポスト・イット」が誕生した。

フライ氏はこれを「聖歌本のしおりに使い始め」(ガーディアン紙より)便利さを実感。その様子を知って製品の未来を確信した同社のジェフ・ニコルソン氏が、まずは職場の同僚たちにサンプルを配り始めたという。すると、ニコルソン氏の秘書が「あなたは私に卸売業者になって欲しいの?」と怒りに来たほど、サンプルの配布依頼が殺到。これに気を良くしたニコルソン氏だが、上司は「企業は、ゴミになった紙をメモに使うと主張」し、誰が金を出すのかと製品化を却下したそうだ。ニコルソン氏は当時を振り返り「どんな偉大な新製品でも、少なくとも3回はマネージャーに潰される」(同)との格言を得たと話している。

結局誕生から6年にわたる社内でのせめぎ合いや、難航するテスト販売などを乗り越え、「ポスト・イット」は1980年に米国で初めて商品化。30年経った現在では、種類も増えて「8つのサイズに25の形、62色で150か国で販売」(オーストラリア放送局SBSより)されるほどの大ヒット商品となった。米国では「発売以来、毎年事務用品のベストセラートップ5に入り続ける」ほど、欠かせないアイテムに。その実績もあって先日、「ポスト・イット」生みの親となったシルバー氏とフライ氏は、バージニア州にある「National Inventors Hall of Fame(全米発明家殿堂博物館)」の殿堂入りを果たしている。

発売30周年を迎え、明るい話題に包まれている「ポスト・イット」。発売開始は1年遅いものの、日本でも販売元の住友スリーエムが「ポスト・イット」公式サイトで30周年記念キャンペーン(//postit30th.jp/)を行っている。その内容は、キャンペーンサイトに置かれたオンライン用ポスト・イットを使って、オリジナルメッセージを募るというもの。応募されたメッセージは、小さなポスト・イットとしてサイト上に貼られ、クリックすると拡大して読めるようになっている。募集期間は5月31日までで、抽選で2,000名に「東京ガールズコレクション」仕様の「ポスト・イット」が当たるそうだ。

ケータイやパソコンなどのツールが普及しようとも、ある大学教授は「100年間は、人々がポスト・イットを使い続けるだろう」(SBSより)と予測。便利な機械が使えるようになっても、最後に信じられるのはアナログとばかりに、「ポスト・イット」はこれからも利用され続けるのかもしれない。

ちなみに「ポスト・イット」と言えば明るい黄色の紙が定番だ。この色が使われた理由についてニコルソン氏は「偶然、研究室の中に黄色いクズ紙があったから」(ガーディアン紙より)採用したとのこと。今となっては看板となっているあの色さえも、偶然の産物だったらしい。

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