生命維持装置を外す直前に呼吸再開、母の別れの言葉を感じ取った?

2010/04/14 14:27 Written by Narinari.com編集部

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もし身近な人の意識がなくなり、生命維持装置によって命を繋いでいたとき、「いつかは回復するかもしれない」という希望と、変化が見えないまま時が流れる現実との狭間で誰もが苦悩する。不幸な結末を期待する人などいないはずだが、本人や家族にとっての最良の選択を考えていくうちに、どこかで決断の時が訪れるのかもしれない。息子が不幸な事件で意識不明となった英国の母親は、まさにそうした状況に置かれていた。

英南部ボーンマスのスーパーマーケット近くで、当時25歳の男性ニック・ヴェロンさんが事件に遭ったのは昨年7月4日の真夜中のこと。若者に因縁をつけられたヴェロンさんは、工具のドライバーを頭に刺され、大けがを負ってしまった。その後目撃者もいたことから、ヴェロンさんを襲った17歳の少年は逮捕、懲役7年の実刑が下されて事件は解決する。しかし、恋人と幸せな時間を過ごし、年収3万6,000ポンド(約515万円)を稼ぎ、順風満帆に歩んでいたヴェロンさんの人生は一転してしまった。

ヴェロンさんは命を取り留めたものの、事件以来意識が戻ることはなく、生命維持装置によって意識が回復するのを待つ状態に。しかしそのまま約2週間が経過し、母親のスーさんはヴェロンさんの生命維持を諦める旨を医師に伝えた。これにより、「7月19日に家族が最後のお別れをする」(英紙ボーンマス・エコーより)と決め、投薬などをやめることになったという。

そして訪れたその日、スーさんはヴェロンさんに「さよなら」を伝えると、ヴェロンさんの生命維持装置を外し、誰もが迫り来る“その時”を見守るつもりだった。ところが、命の瀬戸際に立たされたヴェロンさんに訪れたのは、絶望ではなく奇跡。周囲の人間が死を覚悟していた中で、ヴェロンさんは突如自発呼吸を再開した。

すると、ヴェロンさんは「数週間以内に体を起こし、再び会話できるようになった」(英紙デイリー・テレグラフより)というほど、あれよあれよと回復。スーさんは「彼が最初の呼吸をしたとき、2度目の人生が始まったの」と感動の瞬間を振り返る。また、ヴェロンさんも「私に起こったことに対する医学的な説明がない。奇跡としか思えない」と、自分のことながら信じられない様子だ。

ただ、ヴェロンさんは車いすの生活を余儀なくされるなど、身体的な機能への影響は残り、「完全な回復は見込めない」(ボーンマス・エコー紙より)とのこと。今後の道のりは決して楽ではないだろうが、死の淵から生還したヴェロンさんなら、きっとこの“壁”も乗り越えていくに違いない。

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