23歳の米野球選手が突然の引退、「人生を捧げたい」と聖職者の道へ。

2010/01/26 15:33 Written by Narinari.com編集部

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明日のメジャーリーガーを目指して、多くの選手が熾烈な競争を繰り広げている米国のマイナーリーグ。ひとえにマイナーリーグと言っても、最も下のルーキーリーグからメジャーリーグ一歩手前のAAA(トリプルA/3A)までは実力に応じて細かくリーグが分けられており、メジャーの夢舞台に到達することができないまま、野球の世界を離れる選手のほうが圧倒的に多いのが実情だ。そのため、マイナーリーグで野球人生を終えた選手にスポットライトが当たることはそう多くはないが、最近、突然の引退を発表した23歳の選手が米メディアの注目を集めている。

この選手は、2007年のドラフトでアスレチックスに2巡目(全体74位)指名されたグラント・デスメ外野手。まだプロとしてのキャリアを歩み始めたばかりだが、走攻守の揃った将来有望な選手として期待を寄せられていた。米スポーツ専門局ESPNによると、2009年は1Aで131試合に出場し、打率.288、31本塁打、89打点の打撃成績を残した上に、40盗塁をマーク。さらに昨秋行われたアリゾナ・フォールリーグでは、打率.315、11本塁打、27打点の成績でリーグMVPに選ばれるほどの活躍を見せている。ESPNは「マイナーリーグで唯一の30本塁打30盗塁選手」と紹介。今シーズンは2A昇格が有力で、「メジャーリーガーのポテンシャルを秘めた」有望な選手だったという。

昨年は好成績を残したデスメ選手だが、実はその前の2シーズンは肩や手首、ひざの故障に悩まされ、出場したのはわずか14試合にとどまっていた。そのとき、彼は自分の人生について深く考えていたそう。熱心なカトリック信者のデスメ選手は、野球選手としての道以外に神の近くで働きたいとの夢を持っていたこともあり、試合に出られない日々の中で、自問自答を繰り返していた。

当時の気持ちをデスメ選手はメジャーリーグ公式サイトに「昨シーズンが始まる前、天職への強い気持ちと、神に従いたいという強い欲求があった」とコメント。結局、昨年は飛躍の1年となったが、ケガの心配が頭を離れることはなく、プレーを続けることに「安心できなかった」。そのため、聖職への欲求を再確認するようになり、昨年の最終打席前には現役引退を決めていたそうだ。今年8月からは聖職者になるための学校へ通い始める予定で、この決断に後悔はないと言うが、将来的にはマイナーリーグ復帰の可能性を捨てていないとも語っている。

米紙ニューヨーク・デイリーニューズは、過去に同様の決断をしたメジャーリーガーやプロサッカー選手がいたことを紹介しており、米国では初めてのケースというわけではない。ただ、活躍が見込まれる有望な若手選手としては珍しいようで、多くの米メディアがデスメ選手の決断を伝えている。まだ23歳と若く、引退を惜しむ声も聞かれるが、本人が心から望んだ聖職への道。これから充実した人生を送って欲しいものだ。

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