トイレットペーパーの芯を芸術に、わずかな空間に日常の1コマを表現。

2010/01/15 11:19 Written by Narinari.com編集部

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自分の中に湧きだしたイメージを、多様な形で表現するのが芸術家。その表現の仕方に制限や決まりはなく、何を表現の場にするのかという点も作品の魅力となるが、あるフランスの芸術家は、作品のキャンパスをトイレットペーパーの芯に求めた。紙を切って作った人間や動物などを芯の中に配置し、人々の日常生活を立体的に描きだした作品の数々は、味わいのある世界を創り出している。

この作品を手掛けているのは33歳のフランス人芸術家アナスタシア・エリアスさん。作品を紹介している自身の公式サイトによれば、エリアスさんは2003年頃からフランス国内の展覧会に出展を始め、絵画や貼り絵、写真などを中心に活動しているという。その作品の数々はエリアスさんのブログでも見られるが、2009年からはトイレットペーパーの芯を使った作品が登場。新たな境地を見出している。

誰もが毎日目にしているはずのトイレットペーパーだけに、その芯の中の空間がいかに狭いのかは思い浮かべやすいところ。エリアスさんは芯と同じ色の紙を用意して、人や動物、木の枝などの細かな紙型を作成。それをピンセットで丁寧に芯の中に配置し、日常生活の1コマを描き出していく。

例えば「雪のチューブ、冬の香り」というタイトルの作品では、2人の子どもが雪だるまを作る様子を表現。上部からは木の枝が伸び、手前には雪を転がしてパーツを作っている子ども、奥には雪だるまを成形する子ども、そして子どもたちの手前には尾を立てて堂々としている犬がいるなど、空間的な奥行きも有効に活用している。

また「リネンのチューブ、新鮮な香り」という作品では、洗濯をしている女性の姿を表現。ズボンやシャツを干している女性の足下には洗濯かごを配置する細かさも見られるほか、洗濯物や女性の髪、女性がはいているスカートは左側へ流れるように紙が切られ、風が吹いている様子がうかがえる。ひとつひとつのパーツは非常に小さいが、どの作品も何を表現しているのかは瞬時に伝わり、今にも動き出しそうなほど丁寧な作りだ。

そして、さらにこれらの作品の魅力を高めているのが、光を当てたときに浮かび上がる味わい深さ。作りだされる陰影や、紙の厚さの違いが生み出す光の通し方の違いが、想像力をかきたてる1コマを完成させている。

「作品のイメージは、周りの人たちの日常生活を見ることから生まれる」(英紙デイリー・メール)と話すエリアスさん。これまでもリサイクル品を使った作品を作ってきたそうで、その一環としてトイレットペーパーの芯を使うことを思い付いたという。細かい作業だけに作品の制作には時間もかかるが、「慣れと忍耐力があれば、より簡単にできる」と、見通しは明るいようだ。

なお、この芯の作品は1個90ポンド(約1万3,000円)で販売されているそう。トイレットペーパーの芯だと思うと手頃な値段とは言えないが、エリアスさんのユーモアと苦労を理解できれば、この値段も高くはないのかもしれない。

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